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【ジス】
「お爺さん、日本にはいないの?」
『うん。私、ママの方の爺ちゃんはイタリア人でさ。婆ちゃんは日本人で……2人とも今はイタリアにいる』
今、凄い事を聞いたような気がする。
イタリアってあのイタリアでしょ?
A、イタリア人の血も入ってるんだ……。
「Aって、口を開けば新しい情報ばっかだね」
『んな事ないよ』
「こないだも、実は日本語話せるって初めて聞いた」
もう出会ってから結構経つというのに、俺はAの事をあまり知らないのかもしれない。
『みんな聞いてこないじゃん。聞いたら教えるよ』
「じゃあ誕生日は?」
『ちょっと私にデメリットのある事は』
「ないでしょ。教えてくれたら盛大に祝ってあげるのに」
というより……彼女はあまり自分を語りたがらない。
謙虚だとか、そういう問題ではなくて。
どんなに仲良くなろうと、
絶対にここから先には踏み込んでくるな。
そう言われているようにも感じる。
『どのくらい盛大?』
「フラッシュモブくらい」
『え、それいいね。何人くらい呼んでくれんの?』
「ん〜、俺の友達はみんな呼んであげる」
『ジス友達いっぱいいるもんね〜、でも私を知ってる人少ないだろ(笑)』
「俺の大事な人だよって言えば、みんなすぐ来てくれるよ」
『そっか〜、優しい人ばっかりだ』
それは少し……じゃないな、だいぶ悲しい。
少し目線をあげると、寄り添うように咲く二輪の桜が揺れていた。
「A」
『んん〜?』
「これ、綺麗だよ」
『おお!さんきゅうジス!ほんとだ、綺麗に咲いてる』
色んな角度で、何枚か写真を撮るA。
「………うん、綺麗」
また、来年も2人で来れたらいいな。
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作者名:歓楽街 | 作成日時:2023年1月30日 21時