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【ジナ】
そう、あれは3年ほど前の出来事だ。
「みんな」
その事を切り出したのは、セロニだった。
「……私、そう遠くないうちにPLEDISを辞めるよ」
「え…!?」
「…………うそ」
「セロナ、それ、どういう事……」
ユナが聞けば、セロンは「アイドルを目指すことは諦める」と、そう言った。
「そんな………」
私が小さく呟くと、セロニは首を振った。
「自分の事は、自分が誰よりも分かっている。……もう、期限が近づいてる。……私は、ここにいても夢を叶えることは出来ない」
“音楽と共に生きること”。
出会ったばかりの頃に彼女が私に教えてくれた、彼女の夢だ。
だからきっと、音楽を楽しんで音楽と生きるアイドルという仕事は、彼女にとってはとても輝かしく素敵な仕事だったんだろう。
だからこそ、こんな事務所でも頑張って来れたんだろう。
そして、セロンがいたから私も一緒の夢を見た。
歌を大好きになれた。
仲間がいれば、なんだってできると思えた。
「………音楽は続けたい。でも此処にいては、私は幸せにはなれない」
セロンはそんなつもりないだろうけど、その言葉は「お前も現実を見ろ」という意味を含んでいるように感じた。
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作者名:歓楽街 | 作成日時:2023年3月12日 12時