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#47 決められない ページ10

「……ステファニー様がA様に向けて書かれた手紙を、私は受け取っております。どうやらステファニー様は、A様のご自宅が爆破されたことを大変心配されているようです」

秘書は私に一枚の紙を差し出しながらそう語る。
花柄が散りばめられた、桃色の綺麗な封筒。

「彼女は君の安否を俺に問うてきた。だから、諸都合で居場所は教えられないが、Aは生きていると教えてやったんだ。そうしたら、これを渡してくれと俺に言ってきた。彼女は若いが、この市の内部事情を大体知っている。勿論俺の裏の顔だって知っているだろうな。それでも俺にそんなことを頼んでくるなんて……いやはや、親戚想いのいい従姉妹じゃあないか」

これが、市長のタチの悪いところ。
家族や友人を人質にとって、双方を利用する。
きっと、従姉(ねえ)さんにも、私の存在を使って脅しをかけているのだろう。

……どうするのが、最善か。
従姉さんは長年の夢を叶えて、警察官になっている。経緯は知らないが、20歳という年齢で警察官としての活動を認められるという異例の待遇を受けているのだから、きっと人並みではない努力をしたのだろう。
私が否定的な態度を取れば、従姉さんにまで市長の手が回るのは確実だ。
良くて失脚、悪くて社会的にも肉体的にも、死ぬ。

でも、このタイミングで、「フーゴがいなくなる」ことを前提に話を始めるということは、
__近いうちにフーゴを捨てる気でいる、ということだろう。
そんなことを許せるわけがない。
フーゴを使えるだけ使っておいて、限界まで搾り取ったら容赦なく捨てる。そして余った私すらも、使えるだけ利用するつもりでいるのだろうか。

「もう一度訊こう。__君は如何なる状況でも、俺のために働いてくれるかい?」

いやらしい笑顔。視界の端がちかちかと白黒に点滅する。
こいつには屈したくない、絶対に屈さない。
でも、私が抵抗すれば、従姉さんはどうなる?
……フーゴは、どうなるんだ……?

無言で秘書に歩み寄り、桃色の封筒を受け取る。
そして、踵を返して市長たちに背中を向けた。

「肯定と受け取らせてもらうよ」
『……勝手にして』

私は静かにその場を去った。
……早く、フーゴのところに、戻らないと。

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あゆ - 授業中なのに、あそこまで描けるっていう...ヤバ...(語彙カ) (2019年1月7日 8時) (レス) id: 072ca93e4c (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - 夜桜美月さん» コメントありがとうございます!やっぱり描いちゃいますよねぇ…笑 でも今は一番前の席になっちゃって、先生の目の前なので描けなくなりました(´ー`) 無念です。 (2018年3月2日 19時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜美月(プロフ) - いつも楽しく見てます!落書きのレベル高!その画力を恵んでくだせぇ。授業中絵描いちゃいますよね。机とか、そして見つかる\(^o^)/ (2018年3月2日 19時) (レス) id: 20b5aa4547 (このIDを非表示/違反報告)
メイ - ccさん» いえいえ!質問に答えてくださってありがとうございました!これからも頑張って下さい! (2018年2月24日 12時) (レス) id: b6d44dcbc7 (このIDを非表示/違反報告)
cc(プロフ) - メイさん» 応援と質問ありがとうございました!これからも頑張ります(*^o^*) (2018年2月24日 7時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:cc | 作成日時:2018年1月14日 18時

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