電話 ページ20
当然眠れるわけもなく、
ベランダへ出て、
消えそうな月を見上げていた。
雲に隠れては、
また顔を出し、
暗い夜空を照らす月。
そんな月を見ながら、
お酒を飲む。
お酒の力で眠れればいい。
そう思って。
何も考えたくないのに、
さっきまで一緒にいた紫耀の事が蘇ってきてしまう。
抱き締められた温もりや匂い、
唇の感触を思い出し、
胸がドキドキする…
思い出す人が、
凛じゃない事が、
また私の本当の心の中を、
自分自身に知らせる事になってしまった。
A「ダメなのに…」
凛と別れて、
紫耀を選ぶなんて、
そんな事は出来ないのに…
その時スマホが鳴る…
紫耀からだった…
電話に出てどうするの？
出なきゃいいのに、
私はそれが出来ない。
紫耀「もしもし…A？起きてた？」
A「うん…」
紫耀「今、ベランダ？」
A「うん…」
紫耀「やっぱり。俺もベランダにいるよ。あのAの椅子に座ってる。覚えてる？」
A「そう…うん。」
紫耀「今度うち来た時、一緒に座ろうよ。」
A「…うん」
紫耀「嬉しいな。俺達に、今度があるんだね。良かった。なんだか今、すごく素直だね。電話して良かった。」
A「ねぇ、紫耀？私は紫耀を拒めないの。結局私は、紫耀の事を思う気持ちを止められない…。それ分かってて、昨日も今日も会いに来たんでしょ？」
お酒の力なのか、
凛の彼女と言う立場も忘れて、
もう強がる事も、
嫌がってるフリするのも忘れて、
本心で話していた。
紫耀「うーん、分かってたっていうか、信じてたっていう方が近いかな。」
A「信じてたって、私の事を？それだったら、間違ってるわ。私は彼氏いるから…。紫耀だって、彼女いたじゃない。」
紫耀「それは言うなよなー。まぁ、信じてたのは、俺達の想いをかな。あの愛し合って一緒に過ごした、あの日々の気持ちは、消えないって。消せるわけないって。A、俺の事大好きだったじゃん。」
A「なにそれ、すごい自信ね。笑」
紫耀「あー、今笑ってるんだよねー。笑ってる顔見たいなー。ねぇ！テレビ電話に変えていい？」
A「嫌よ。笑」
紫耀「ケチ！」
電話越しに笑い合う私達。
眠れずに結局それからまた話し続けた。
お互いの仕事の話や、
最近のメンバーの話しなど、
私たちの話以外の話しをした。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2021年8月7日 1時
