立ち尽くす ページ12
紫耀「待ってて？すぐ行くから！」
そう言われ、
我に帰ると、
どうしていいのか分からなくなって電話を切った。
鳴り続けるスマホに出る事もなく、
ただ立ち尽くす私に、
「あの…大丈夫ですか？」
そう声を掛けられた。
A「あっ、はい。大丈夫です。すみません…」
「そうですか？ならこれで。」
親切な女性に頭を下げると、
地下鉄の駅に向かって歩き出した。
その時凛からLINEが。
“今日はどうする？”
ごめんなさい…凛。
こんな気持ちのまま会えない…
“お疲れ様。今日は寝不足だから帰るね。”
そう返した。
“了解！寝不足の原因は俺のせい？笑”
明け方まで腕の中から離してもらえなかった…
凛の悲しみの分、
怒りの分だから、
受け止める覚悟でいたのに、
結局優しく抱いてくれたんだよね。
でも、胸元につけられた赤いしるしに、
凛の独占欲を感じた。
地下鉄に乗り込み、
自分の左手の指輪を見つめる。
こんな綺麗な指輪、
私にははめる資格がないのに…
改札を出て、
いつも寄るスーパーには寄らずに、
うどん屋さんに入った。
もうなんだか今日は、
買い物も作るのも面倒だったから。
店を出てマンションの方へ歩いていると、
目の前に停まる1台の車が目に入った。
…ねぇ、どうして？
その場で立ち止まり、
その車を見つめていると、
運転席のドアが開き、
キャップにマスク姿の紫耀が降りて来た。
私の側まで小走りでやって来ると、
紫耀「おかえり」
そう言って右手を取られ、
握られた。
あまりにも自然なその行動に、
手を引く事も忘れ、
A「何で…いるの？」
紫耀「だって、昨日この辺まで送ったじゃん。よかった間に合って。めっちゃ飛ばして来た。笑」
サングラスをしてないから、
キャップとマスクの隙間から覗く目が、
クシャッとなったのが見えた。
笑うとこうなる目も好きだったな…
こうなるかもとは予想出来たはず。
分かってて、
マンション近くまで送ってもらった。
いくらでも違う場所を言って、
嘘だってつけたはずなのに…
私は何をしたいんだろう…
それなのに、
A「何でまた来るのよ…」
ズルいでしょ私って…
本当に自分が嫌で堪らない。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2021年8月7日 1時
