本当に ページ32
唇がそっと離れると、
紫耀「…A？」
名前を呼ばれ、
髪を撫でられ、
手を握られた。
A「んー？」
キスをした後の紫耀は、
いつもよりも少しだけ声が低くなる。
そんな些細なことだけど、
いつも、
こんな事も好きだなって思っていたな。
そんな事を思いながら、
紫耀を見つめ、
その手を握り返した。
紫耀「…2人でいる時だけでいいから、今だけは俺だけの事を想って欲しい…。」
不安そうにそんな事を言う。
A「想ってるわ…目の前の紫耀の事だけ想ってる。」
紫耀「…ありがとう」
そう言って、
悲しそうに微笑んだから、
A「信じてないの？」
なんだかムキになって、
そう言ってしまっていた。
紫耀「そうじゃなくて、Aの言葉を信じてるけど、もっと、もっと欲しくて…、ごめんね…。俺ね、全然変わってない。独占欲強くて、嫉妬深くて、大人らしい愛し方とか出来ない。それであの頃Aとダメになったのに、自分でも変わりたいって思って、頑張って変えようって思ったけど、Aを前にすると、全然ダメ…。だから、そんな俺を、Aがやっぱり嫌だって思って、また離れていっちゃいそうで、不安なの…。ごめんね、2番目のくせに、こんな事言って…。でも、伝えておかなきゃ不安で…」
きっと私が紫耀への想いを口に出して伝えていないせいだよね…
ずっと嫌いだとしか言ってないもの。
凛がいるのに、
そんな私が紫耀へ好きだなんて言えるはずないとか思ってた。
そして、
好きだと言葉にしてしまうことで、
自分の気持ちがどうなるのかが怖かったの…
でも、今気付かされた。
いつでも私は自分のことしか考えてないんだ…
A「…紫耀。」
紫耀「ごめんね、変な空気にしちゃったね。忘れて？」
そう言いながら、
無理して笑う笑顔がつらい。
A「ううん。ねぇ紫耀？私ね、紫耀が好きよ。紫耀が思ってるよりも、きっと、ずっとずっと、大好きよ？」
やっと好きだと言えたことで、
なんだか胸が軽くなった気がした。
紫耀「…本当に？」
まだまだ不安に揺れる目を見つめ、
A「本当に大好き。でも、こんな事してる私が、紫耀に好きだって言える訳ないって、そう思ってたの。好きだなんて言うなら、じゃあ、二股なんてやめて、ちゃんとしなよって話になるでしょ？だから言っちゃいけないって思ってた…。…ううん。違うね、好きだって言ってしまったら、気持ちが止まらなくなるのが怖かったの。だから我慢してた。」
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2021年8月7日 1時
