Contract love ～偽装恋愛～ 20 (ページ33)

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心の中で叫ぶことしか… ページ33

急なその言葉に、
私は言葉を失っていた。
遅かれ早かれ分かってたのに。
こんな時が来る事を、
むしろ望んでいたはずなのに…
どうして、
こんなにも悲しいの？
心が痛くて、
目の前が真っ黒になっていく感覚だけが、
やけにリアルだった。

紫耀「じゃあ、…行くね？」

そう言って立ち上がる紫耀の言葉も行動も、
スローモーションに見える。
このまま帰って行ってしまう…
これで終わりなのに、
このままもう会えなくなるのに、
これが別れなのに、
私は立ち上がる事も出来ずに、
言葉も見つからないままだった。

最後まで私は何も言えないの？
ただ涙だけが溢れてくるだけで、
どうしていいのかわからない…

そんな私に、

紫耀「…そんなに泣かないでよ。帰れないじゃん。」

そう言って、
私の前に屈むと、
優しく頭をポンポンと、
まるで子供をあやすみたいにしてくれる。
最後まで優しいんだね紫耀は…
いつもいつも、
こんな私の為に必死になってくれて、
優しさで包んでくれていた。
その優しさに、
今にも、
別れるのなんて嫌だと、
まだこんなにも好きなのと
言ってしまいそうになる。
でも、
それだけは言えない。
絶対にダメ。
こんな状況の中でも、
そんな冷静な自分がいる事にも驚いた。

A「紫耀…」

やっとどうにか名前だけは言えた。
こうして名前を呼び掛けるのも最後だね…

紫耀「ん？」

A「…ごめんね…本当にごめんなさい…」

今までの事が一瞬にして思い出され、
私は紫耀に対して謝る事しか出来なかった…

紫耀「ごめんじゃなくて、これが最後なんだから、他の言葉が聞きたいよ…」

紫耀も泣いていた。

紫耀が欲しい言葉…
手に取るように分かる。
最後だから、
望む言葉を言おう。
私も、
最後だからちゃんと伝えたい…

A「愛してたよ…心の底から…」

これだけはやっぱり伝えたかったの。

あなたと出会い、
恋に落ち、
幸せだった。
こんなにも人を好きになれるなんて
思いもしなかった。
愛し、愛されたこの大恋愛を、
私はきっと忘れないから…

そんな思いで見つめていると突然、

紫耀「A…、ごめん」

そう言われ、
大好きな紫耀の唇が重なっていた…
お互い涙の味がしたと思う。
そしてそれはすぐに離れると、
何も言わずに部屋から出て行く紫耀の背中…

そんな背中を、
溢れる涙越しに
ぼんやりと見つめながら、

本当は過去形じゃない…
今でも愛している…

そう心の中で叫び、
泣き崩れることしか出来なかった…