陽炎 ページ1
ママの思いを知って、
有り難くて、
嬉しくて、
また涙が出てしまった。
ママ「仕事は、焦らずにゆっくり探せばいいんじゃないの？」
A「うん」
ママ「ねぇ？それと、話は戻るけど、彼との事。少しだけ強い事を言ってもいいかしら。」
A「何？」
ママ「彼との関係が深まって、怖くてっていう、Aちゃんの思いも覚悟も分かったわ。まぁ、彼と別れる事に関して言えば、正直な所私は反対なんだけれど、理解は出来た。けれど、それはAちゃんの味方である私だからよ。けれど、彼の立場で考えたら、やっぱり酷いことをする事になるわと思わない？逆の立場になってみたら、あんまりだと思わない？」
確かに一方的に別れたいと言い、
仕事辞める事も言わずに、
なんなら姿さえも消そうと考えている。
とても酷い事だ。
A「…それは、うん…」
ママ「実は付き合うよりも、別れの方が凄く大変なのよ？でも、2人で始めた恋愛なんだから、終わりもちゃんと2人で終わらせなきゃダメ。」
A「2人で…そうだね…うん。私、最低だな…」
俊介の時と同じ事をするところだった…
ママ「そう思うなら、ちゃんときれいに別れなさいね。まだ大丈夫。間に合うわ。ちゃんと気付いたんだから。Aちゃんは分かってくれると思ったわ。」
A「ママ、ありがとう。私、また間違うところだった。ママに言われなかったら、私は自分の事でいっぱいで、紫耀の立場とか考えられなかった。最低な事をするところだったわ。」
ママ「ううん。とりあえず、彼と沢山話してみて、なぜ別れたいのか、全部話してみなさい。時間は掛かるでしょうけど、お互いに納得いくまでとことん話すしかないわね。」
A「うん。」
やっぱりママと話しに来て良かった。
いつでも私の間違いを正してくれるから。
まるで本当のママみたいに。
ママが呼んでくれたタクシーの中、
渋滞する車内から視線を前に向けると、
夏の日差しに照らされ、
ユラユラと揺らめく陽炎。
それと同じように、
自分の揺れる思いも感じていた。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2021年4月22日 17時
