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荷物を纏める ページ44

翌朝。
目が覚めると、
見慣れない景色に、
あー、やっぱり全て現実だったんだなと思い知る。
この8畳の部屋で寝たのなんて、
結局数回しかなかったものね。

今日は久しぶりのお休み。
休みで良かった。
洗面所の鏡に映る自分を見て、
心からそう思った。

リビングの棚に飾ってある両親との写真。
それをそっと手に取り、

A「ごめんね?また引っ越さなきゃ…。」

そう呟き、
写真立てをバックに入れた。
取り敢えずこの部屋の荷物をまとめよう。
そう思い、
部屋中に散らばった自分の物をかき集めて行く。
スーツケースと紙袋に入れて、
取り敢えず隣の部屋に移動させよう。
そして、
今日のうちに、
隣の部屋の荷物も全部まとめよう。
そう思って、
隣の部屋へ向かった。

玄関を開けると、
並べてあるサンダルがあった。
それで紫耀がこの部屋にいる事が分かった…
ここに泊まったんだね…
こんな時間にまだいるなんて、
紫耀もお休みなのかな?
そっか…
私達の今のこんな状況じゃなかったら、
何事もなかったのなら、
数ヶ月ぶりに2人一緒のお休みだねって言ってだんだろうな…
そんな事を思いながら、
そっと玄関ドアを閉めた。

手にした荷物を持って、
歩き出した瞬間、

紫耀「A!」

名前を呼ばれ、
振り向いた。

紫耀「その荷物…まさか…」

A「…今まで…ありがとう。お世話になりました。」

泣くのを必死に堪える。
泣きそうなのがバレないように、
声が震えないように、
ゆっくりと話し、
笑顔で…

紫耀「イヤだ…。出て行かないで。」

そう言いながら、
裸足で駆け寄ってきた紫耀。
近付いて来た紫耀に、
手を引かれそうになるのが分かったので、
私は咄嗟に一歩下がった。

この一瞬の出来事が、
私達の今の状況を物語っていた。

その私の行動に、
紫耀は傷付いた顔をすると、
宙に浮いた手をキツく握り、
唇を噛み締めていた。

バイバイ→←事実は変わらない



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作者名:ひろみ | 作成日時:2020年2月2日 10時

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