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溢れ出る涙 ページ49

マネージャー陣での打ち合わせを終え、
レッスン室へ入ると、
一瞬で紫耀に目が奪われた。

ダンスナンバーの振り付けが完成したみたいで、
海人君と真剣に踊っていたから。

真剣に踊っている今なら、
少しだけ見てもいい?

正直に言って、
別れても好きな気持ちは無くならない。
もう終わった恋だからこそ、
もう私の彼ではないからこそ、
こんなにも胸が熱くなるし、
苦しい…

鏡越しに見る真剣な表情、
大好きな大きな背中、
そんな姿を見ていて、
これから顔を合わせて上手くやっていく自信が、
この瞬間にほぼ無くなってしまった…

曲が終わるだいぶん前に、
そっと視線を外し、
平然を装って、
手に持っていた手帳を開いた。
また涙が出てしまいそうだったから。

A「…はぁ」

廊下へ出た。
すると、

中村さん「あっ、ねぇ、ちょっといい?さっき言ってた、岸君のスケジュールなんだけど。」

そう言って中村さんがやって来た。

A「あっ、はい。」

慌てて笑顔を作り、
返事をした。

中村さん「あっ、うん…。ちょっとこっちで話しましょうか。」

そう言われ、
空き部屋の中へ。

ドアを閉めると、

中村さん「どうしたのよ、泣きそうな顔して。彼とあの事で喧嘩したの?」

バレちゃったな…
そうだよね。
こんな顔してたら、
誰だって変だって思うよね。

A「…昨日、…お別れ、…したんです…」

優しい中村さんを前にすると、
涙が我慢出来なかった。

中村さん「ウソでしょ…平野君と別れたって言うの?」

A「はい。」

中村さん「待って?えっ?まさかあの事が原因なの?」

私が好きな歌も歌えないって相談してたから。

A「原因………。そうですね。あの歌をもう聴くことも歌う事も出来ないっていう、それがきっかけなんでしょうね…。でも、別れた理由は1つだけじゃないんです…。色んな事があって…歯車が狂っちゃって、…それで……。実は最近は喧嘩ばかりで、上手くいって無かったんです。好きって気持ちはお互いあるのに、上手くやっていけなかった…。だから…彼は……。ううん。私が紫耀に…もっと寄り添って、安心させてあげられてれば良かったんです。分かってたのに、私は私を変えれなかったから…。だから、ダメになっちゃったんです…。私のせいなんです……」

泣いてしまった私を、
中村さんは、
優しく抱きしめてくれた。

中村さん「辛かったわね。よく頑張ったね。」

そう言われ、
また涙が溢れ出た。

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作者名:ひろみ | 作成日時:2020年2月2日 10時

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