Contract love ～偽装恋愛～ 15 (ページ42)

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声を聞いただけで… ページ42

早足で歩いたからか、
泣き過ぎたからなのか、
紫耀と別れたからなのか、
息が苦しい。
胸が苦しい。

人の流れから逸れて立ち止まり、
溢れ出る涙を拭う。
誰もこんな私を気に止める人なんていない。

そして、
ふと視線を上げた時に、
ショーウィンドウに映る自分の姿が目に入った。

情けない…
バカみたい…

映った自分の姿を見て、
そう思った。
こうなる事ぐらい、
別れが来る事ぐらい、
そんな事覚悟してたはずなのに、
何勘違いしてたんだろう？…
ずっと一緒にいれる訳ないじゃないの…

そう思って歩き出そうとした時だった…

紫耀「待って！」

そう名前を呼ばれ、
手首を後ろから掴まれた…

A「ッッ！！」

声を聞いただけで、
その力を感じただけで、
それが誰だか分かった。

紫耀「良かった…見つけた…」

そう言って、
背後から抱き締められた。

A「イヤッッ！離して！」

紫耀「離さないっ！絶対に離さない！」

必死に腕から抜け出そうとしても全然解けない。
こんなにツライのに、
こんなに憎いのに、
こんなに許せないのに…
なのに、
抱き締められた力強い腕を感じ、
大好きなその声を聞いただけで、
やっぱり好きなんだと思い知る。
けれど、

A「本当にやめて…。本気で今の状況を考えて。こんな所見つかったらどうするの？ちゃんと自覚を持って。」

私は冷静だった。
何よりも今のこの状況はマズイ…

紫耀「そんな事どうだっていい。Aを失うぐらいなら、もうどうなってもいい…行かないで…」

流石に通り過ぎて行く人も、
何事かとチラチラと見てくる。
バレるのも時間の問題かも…

A「…はぁ、離してってば。」

紫耀「じゃあ一緒に来てくれる？」

A「…分かったから、離して。」

そう言うと、やっと離してくれた。

そして、
手を引かれ、
路上に停めてあった
紫耀の車の助手席に乗せられた。