1番好きな曲 ページ18
こんな心情の時に限ってこの曲…
彼らの歌の中で、
1番好きな曲。
そして、
悲しい曲。
別れの曲。
ステージ上で、
感情を込めて歌う紫耀の姿を見て、
何故だか涙が出て来てきそうで、
誰にもバレないように、
そっと後ろへ下がり、
スタジオから出た。
人目に付かない所で壁に寄りかかり、
気持ちを落ち着かせていた。
しっかりしなきゃ。
顔を両手で覆い、
深呼吸をしていると、
斉藤マネージャー「お疲れ様。」
声を掛けられた。
手を下ろし、
顔をあげ見ると、
斉藤マネージャーがいた。
A「お疲れ様です。」
斉藤「体調悪いの？」
A「あーはい。すみません。」
嘘をついた。
斉藤「そっか。うん。大丈夫？もう休んで？岸は俺が送っていくから。」
A「いえ、大丈夫です。ありがとうございます。ちょっとだけ休ませてもらったら、また戻りますので。」
斉藤「無理しないで。そんな顔してさ…俺がほっとけないの分かるでしょ？」
A「斉藤さん…。」
あー…
この人にはバレてるんだな…
体調なんて悪くない。
心情的にツライって…
斉藤「1人で抱え込んでそんな顔するなよ。どんな話でも聞くから、遠慮しないで。少しでも吐き出したら楽になるよ？」
A「…私は、…」
いつも優しい斉藤さん。
斉藤さんの気持ちも知ってる。
けど、紫耀との事も初めから知ってくれている人。
それに甘え、
こうして話しを始める私は、
きっと凄く無神経な女。
斉藤「うん。」
それでも、
聞き出すわけでもなく、
優しく話してくれる、
そんなこの人に話を聞いてもらいたいの。
A「きっと恋愛に…向いてないんです。」
斉藤「なんでそう思うの？」
A「恋人って…付き合うって、何なのかなって…そんな事考えてしまうんです。好きだから一緒にいる。そんな単純な事でいいのに…って思ってしまうんです。でも…それは私だけの考えで。私も気持ちは決して相手に負けないくらいちゃんと大きな想いはあるんです。でも、口下手で上手く伝えきれないし、相手がこうして欲しいって思う事にも出来るだけ合わせてやっていきたい。でも、それが窮屈に感じてしまうんです。」
きっと斉藤さんに話すべき話ではない。
紫耀に言わないととは分かっている。
それは昨日気付いたばかりなの。
だから分かってる。
けど、
悲しませるよね…
さっき、
あの歌はもう聴かないし、
歌わないと言った時に見せてくれた、
あの笑顔を思うと、
言えない…
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2020年2月2日 10時
