Contract love ～偽装恋愛～ (ページ9)

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彼の一線ページ9

少しは打ち解けようとしてくれてるのかな…
そう思った次の瞬間、

「あの…。俺からこんなこと言うのもどうかと思うんだけど、Aとそんな関係になるつもりはないから。最初に言っておかなきゃなって思って…。触れることはないから。」

決定的な一線を引かれた。

その方が私にとってもいい事のはず。
なのに、何故胸が痛むんだろ…
でも、感情を隠して笑うことなんて私には簡単に出来てしまう。
こんな時、便利だな…

「分かった。笑」

「良かった。」

私の笑顔に簡単に騙されてしまうんだね。
それもそうか。
この人は、私の胸の内を知ろうとする必要がないんだもの…

「でも、安心して？社長さんにはその辺も上手く言うから。バレたら、大変でしょ？」

そう。私とあなたとのこんな話を社長さんが知ったら、いい顔はしないはず。
あなたにも、私とそう言う関係になる事を、話しているはずだから。

「ありがとう。助かるよ。…じゃあ、帰るね。」

「はい。おやすみなさい…」

彼はそそくさと帰って行った。
これでいいの…
そうよ！私にとってもこれでいいなら、それが1番じゃない？
体の関係がなくても、お金を頂けるなんて。
こんないい話ないわよ！
ラッキーじゃないの！
ただ、

「…紫耀と呼ぶことはないわ…」

そう呟いた。
カーテンを開けると、綺麗な夜景が広がっていた。

「わぁ…。さすが成功者マンション…」

ここは、成功者が住む成功者マンション…
そして、この夜景を作っている、一つ一つの明かりも、また別の成功者マンションが織り成す景色。

窓を開けて、ベランダへ出た。

「あぁー！最高！」

少し広めのベランダ。
手すりまで行き、夜空を見上げる。

さっき見た夜空よりも益々どんよりしている…
星なんか1つも見えない…

「やっぱり、仲間だね…」

夜空に向かって、そう呟いた。