気付かされた ページ49
どのくらいそうしていただろう…
携帯が鳴る音で、気が付いた。
気付けば、涙で頬が濡れていた…
私、泣いてる…
5年間泣けなかったのに…
いや、泣かないように、必死に気を張って生きてきたのに？
あー、それだけ私にとって、あなたの存在が大きくなったと言うことなんだね。
今更だけど…分かっていたけど…、気付かされた。
離れたところにある携帯が切れ、また鳴り始めた。
立ち上がり、携帯の表示を見ると、
主任。
何だろう…
「…もしもし。すみません、出れなくて…」
「あっ、もしもし。斉藤です。…もしかして電話まずかったですか？」
彼と一緒だと気を利かせてくれてるのかな？
「…いえ。大丈夫です。」
「良かった。」
「…。」
「あっ、あの…。これから中村さんとAさんに仕事の件で話をしたい事がありまして…。会社では話せない事なんです。メールにしようかと思ったんですが、直接の方がいいと思いまして…」
「分かりました。」
特に用事もないし、気分を変えたいのもあって行くことにした。
何より仕事の話だと言われたら、行かないわけに行かない。
指定されたカフェへ。
マンションから歩いて行けるお店だった為、徒歩で向かう事にした。
サングラスを掛け、ヒールで歩く。
どんなに上手く行かない事があっても、クヨクヨとしてしまうような出来事があっても、この東京に出てきてからは、ヒールで歩けば強い自分を保てるような気がしていた。
今日もそう。
だから、背筋をピンと伸びし、ヒールの音を響かせながら、颯爽と、敢えて歩いた。
カフェは、大通りに面していた。
テラス席に主任と中村さんが既に座っている。
「すみません。お待たせしました。」
「いえ。お休みの日にすみません。」
いつものスーツ姿では無く、私服の主任が少し新鮮だった。
やっぱり、この人はカッコイイんだな…
「そうですよー。主任。何なんですか？わざわざ呼び出して。今日は主任の奢りですよね？」
中村さんはそう言いながら、私にウインクをする。
可愛らしい人だな。
「はい。もちろん、ここは私の奢りですよ！好きなの頼んでください！」
「アハハ。主任真面目！」
「フフフ。笑」
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
