夜の雨が好き ページ40
家路を急ぐ。
まだ夕方なのに夜みたいに暗くなるこの東京に未だに慣れない…
私の故郷は、まだこんなに暗くないはず。
駅から出て、買い物をして帰宅した。
今日も来るって言ってたけど、何時頃になるんだろう…
食事は…
ううん…彼女ではないもんな…
そんな事したら、この契約があやふやなものになってしまう。
腕捲りをすると、目に入る手首の赤い跡…
平野君の顔…
斉藤主任の顔…
2人の男性から向けられた想い…
私は…
想いを飲み込んで、これでいいのと自分に言い聞かせた…
食事を終え、お風呂に入った。
22時か…
ベランダに出ると、雨が降り始めていた。
夜の雨が好き。
夜空を見上げる。
雨の日は、星が見えないと分かるから、
探そうとしないで済むの。
静かで、雨音が心地いい。
雨のせいでいつもよりもボヤけた夜景に目をやる。
あの頃、まだ何も知らなかった、ただ幸せに生きていた私が、今の私を見たらなんて言うのかな…
こんな生活辞めてよと言うのかな…
幸せになってると思ってたのに、何で？
そう言って怒るのかな…
でもね？こんな暮らしの中でも私は意外と上手くやってるんだよ？
私はあなたが思っているより意外と強いんだよ？
知らなかったでしょ？
先も見えないと思ってた暮らしにも、少しだけ希望の光が差したの…
だから、あと少しだけ…許してね。
「でも…、やっぱり、…ごめんね…。」
「…誰に対してのごめんね？」
「ビックリした…」
後ろから抱き締められた。
「やっぱりここなんだね…」
「おかえりなさい」
「はぁ…。ただいま。」
後ろから私を抱き締めながら、首筋に顔を埋めている。
「雨だね…」
「雨嫌い？」
後ろから抱きしめられ、暖かい。
人の温もりなんて本当に久しぶりだから。
「ううん。好き。」
「好きか…。俺、雨になりたいって思ったの初めて…。」
「フフフ。雨になりたい人なんて聞いたことがないよ。笑」
「それでも、Aに好きって言ってもらえるなら、雨にでもいいからなりたい…」
この人は…。
やっぱり私なんかには、勿体ない人。
後ろから抱き締められ、回された腕にそっと手を置いた。
「ありがとう。」
「ありがとうか…。」
好きとは言えないの…
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
