鍵付きの重い扉 ページ17
「そうなんだ。笑」
「じゃあ、聞きたいことからいい？」
そう言って、ソファーに座って来た。
私は、さりげなく距離をあけようとする。
「それ！！いいから。そんな事しなくても。」
私が距離を開けるのを阻止した。
「うん。笑」
でも、そう返事をしながら、私はやっぱり距離をあける。
「はぁ…。本当にこんな女の人初めてで、ビックリする…。どうしていいのか分かんない…」
私の事、そんなに扱いづらいと思ってるんだ。
「どうもしなくていいの。私の事は、本当に気にしないで。あなたに気にしてもらうような関係ではないんだから…。」
あなたが求める関係は、そうのはずだよね？
先に高い壁を作ったのはあなた。
だから、私はあなたとの間に鍵付きの重い扉を作ったの。
「また…。それが、また俺が…。はぁ…。」
頭を抱えてまた黙ってしまった。
自分で分かってるの…。
こんな扱いにくい女は面倒だよね？
でも、こんなにも、心の距離を取ろうとするのは、私が弱いから。
1度でも、あなたとの間に作った重い扉の鍵を開けてしまうと、鍵を壊して、扉を開けたままにしてしまう。
あなたをその扉の前で待ち続けてしまう自分が怖い。
この契約でそれは許されないから…
「…聞きたい事って何？」
私がそう聞くと、
こちらを見て、
「何なんだろ…。聞きたい事はあるんだけど、聞けない…。」
「そんな難しい事なの？」
「うん。多分ね…」
「クイズ番組でも出るの？」
「…はぁ？マジで言ってる？」
「…な訳ないじゃん。笑」
「はぁ…。また笑う…。」
クッションに顔を埋めている。
この作り笑顔だけで5年間生きてきた…。
この取って付けたような完璧な笑顔が不快にさせてたんだね？
そうだよね…
「じゃあ、笑わない。嫌だったよね？ごめんね？」
「いや、違う！笑って欲しいけど、笑って欲しくない。」
「ちょっと意味が分からない…」
「悲しそうに笑うから…。はぁ…、正直に言うね。Aがいつも悲しそうに笑うから…。何かその笑顔が頭から離れない…。で、本当に笑った顔が見てみたいって思った…」
見抜かれてた…
そして、私にそんな感情を抱き始めてるなんて……
意外だった。
私の事なんて見てないし、興味もないと思ってたから。
夢中にさせなきゃいけない契約なんだから、これでいいのか。
私を横から見つめる目を見返すことが出来ない。
…何でこんなにも後ろめたくなるの？
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
