濁った月 ページ12
持って来た洋服に着替えて買い物へ出た。
私はスカートをあまり履かない。
スキニーにニット、ロングカーデを羽織った。
このマンションからは、歩けば直ぐにお店がある。
さすが、成功者マンションだ。
立地が凄すぎる…
歩きながら、色々考えた。
彼はスカートを履く女性が好みなのかもしれない。
けれど、一線を引かれたし、
彼好みに寄せるのも何だかしゃくだ…。
でも、用意されていた服を着ていない事がバレると面倒そうだし…
どうしたものかな…
彼が来る時だけ、着替える？
でも、いつ来るかは分からない…
連絡して来てもらう？
いや、連絡先なんて知らないんだった…
というか、次はいつ来るのかな？
いや、もう来ないんじゃないかな？
だって、そういう事しないんだし…
私達は友達でもないから、話す事もないし…
そんな事を考えて歩いていたら、いい感じの家具屋さんを発見。
センスがいいお店。
とりあえず、シングルサイズのシンプルなベッドと、チェストを買った。
明日には配送して貰えるとこ事だった。
スーパーも近所にあって助かった。
買い物を済ませ、帰宅する。
簡単にご飯を作り、食べた。
「ご馳走様でした…」
独り言ばっかりだな…
これから、3年間独り言ばっかりで過ぎていくのかな…
でも、この道を選んだのは私自身。
やるしかないんだ。
気付けば外は真っ暗…
もう1日が終わったんだ。
この部屋からは、遮るものが何も無い。
カーテンをしなくても、どこからも見られる事はない。
ベランダへ出る。
もう日課だ。
ただ昨日までと違う事は、暗くなってから仕事に行かなくていいって事。
毎日そうして5年間生きてきたから、この夜をどう過ごせばいいのか分からない。
「ここに、椅子でも買おうかな。また明日あの家具屋さんに行ってみよう…」
そんな独り言を呟きながら、手すりまで行く。
今日の夜空も、…変わらないな。
毎日、どんより。
暗くもなく明るくもない。
何だか今日は月さえも濁って見える…
「…私だけ…そう見えるのかな？」
こんな生活をスタートさせた私の心がそう見せてるのかな…
ピンポーン。
ん？うちのかな？
まさかね…
誰も来るわけがない…
ピンポーン。
まただ。
インターホンを見に行ってみると、
平野君が画面に映っていた。
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作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
