8畳の部屋 ページ11
アパートへ荷物を取りに行かなきゃな…
買い物もしたいし。
その前に、この部屋を見て回ろう。
寝室の奥にはウォークインクローゼットがある。
「うわぁ…」
洋服が沢山掛かっている。
これを着なきゃいけないの？
恐らくこれは彼の好きなタイプの服装なんだろう。彼に少しでも好かれる為に、これを着てと言うことなんだろうな。
それにしても、見事にスカートばかりだな。
それに、
「こんなドレスいつ着るの？プレイ用って事？笑」
露出度高めのドレスが数枚用意されていて、笑ってしまった。
他の部屋を見て回ろう。
ここは、洗面所、お風呂。
「さっきシャワー浴びたけど、緊張しちゃうぐらい立派だったな…」
こっちのドアは、
「へー、ココもお部屋なんだ…」
8畳ほどの部屋だった。
「よし、ここに住もうっと。」
出かける準備をして、部屋を出た。
用意されていてた服を着る気にはなれず、昨日の服を着て出た。
エントランスから外へ出ると、太陽が眩しい。
私には眩しすぎて、急いでサングラスを掛けた。
そして、色を失った空を見上げ溜息をひとつ…
「…私にはこれがちょうどいい…」
そう呟いて、歩き出した。
この時の様子を、彼に見られていたとは知らずに…
通りに出て、タクシーを拾う。
アパートへ着き、数日分の洋服や下着、その他必要な物をスーツケースに詰め込んだ。
そして、大事な家族写真の写真立てをバッグに入れた。
アパートを出て、タクシーに乗り込む。
あの部屋は手放さないでおこう。
何故だろう…
あの彼との部屋がどうしても自分の家だとは思えないからなのかな。
帰る場所を残しておきたかったのかな…
成功者マンションに戻り、持って来た荷物を8畳の部屋へ運ぶ。
この部屋にもクローゼットが付いているから、そこへ洋服を掛けた。
引き出しも付いているので助かった。
バッグから写真立てを取り出し、ガラスのホコリを拭う。
「ここに3年間住むことになったの。…私頑張れるかな？」
写真の中の父と母に聞いてみる。
大好きな笑顔で写る父と母。
「バカなことしてるって怒る？ごめんね。こんな生き方しかできなくて…でも、見守ってね…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1445人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひろみ
| 作成日時：2018年11月18日 22時
