04： ページ4
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『しつこい男は嫌われますよ』
「お前が電話に出ないのが悪いんだろう」
まさか、ここまで来るとは思わなかった
翔北がある千葉県から飛行機で約４時間
決して近いとは言い難い宮城県にある
私が勤める大学病院まで押しかけてきた、かつての恩師
「なあ、初めて会った時のこと覚えてるか？」
『なんですかそれ元カレか何かですか
私、今からプロポーズされます？』
「┈┈┈ははっ、そんな減らず口聞けるなら大丈夫そうだな」
初めて会ったのはたしか
私が研修医真っ只中だった時だ
「患者優先自分は後回し
俺の嫌いなタイプの医者だったよ」
『早く帰れ早く寝ろ
24時間医者でいる必要はない
いつも怒られてましたね、私』
「技術も周りからの信頼も充分すぎるほどあった
だから余計勿体無いと思ったよ」
きっと、橘先生はこんな話をしたいわけではない
「お前を苦しめていた奴はもう居ない
良い加減、目を覚ませ」
『とっくのとうに覚めてますよ
だからもう向き合いたくないんです
知ってます？
遺体だけは嘘をつかないんです
だから私は毎日運ばれてくる遺体と向き合いたい』
もう温かくもない
声も発さないし目も開かない
だからちゃんと知りたいと思う
「遺体は嘘をつかない、かあ
じゃあ俺からも１つだけ
知ってるか？
生きてる人間の中にも嘘をつかない奴らもいる
例えば、四六時中患者と向き合ってるあいつらとかな」
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 298人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：アラレ | 作成日時：2022年9月2日 1時
