【刀剣乱舞】忘れ扇【加州清光】 (ページ4)

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最初に私の家族になってくれたのは、加州清光様。

家族と言うにはまだぎごちない雰囲気だけど、本丸は暖かい。
もともと霊力が多いわけではないから、鍛刀も上手くいかないけど、それでも楽しい毎日。

政府の担当者の計らいで、高校進学も出来そうだ。
まるで、私が只の子供であるみたい。

「あーるじっ」

ぽすっ、と、清光様が肩に頭をのせてきた。
十分、成人男性に近しい体格であるにも関わらず、重さは殆ど感じない。

「何ですか、清光様」

そんな所から、少し不器用な彼の優しさが伝わって来て、少し嬉しい。

「学校お疲れ様。チュウガッコウ卒業で、学校は終わりなの？」
「いいえ、高校があります。あと三年ですね」

あからさまにふてくされる彼に、笑みがこみ上げる。
愛されてる、のかな。

「今日の任務はどうでしたか？」
「えっとね、主に言われたとおりにこなせたよ。」

主。という言葉を私は好かない。

「扇｡そう呼べと言いましたよね…」
「はーい…。扇は、なんで扇って名前なの？
　学校では別の名前だったじゃん」

私は、叶という名前が嫌い。
理由はとうに忘れたけど。

「…新しい自分になりたかったんですよ、きっと。
　ほら、扇って、末広がりとか、おめでたいですし」
「えー、でも、〈忘れ扇〉とか、〈捨て扇〉って言葉もあるし…。
　悲しい意味の方が多くない？」

清光様は私の事を後ろから抱きしめた。
突然な事に驚いた私は、何も言えない。

「捨てないで」
「俺の事…愛して」

哀。曖。藍。挨。愛。
私はどれを差し出せば良いの？

「私はどこにも行きませんよ」

忘れ扇に、なりたくない。
そう聞こえた気がして、私は清光様を抱きしめ返した。

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