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手の中でコロンと転がる紫色のチューペット。半分に割られたそれは、熱い外気に比例するように冷めたい。指先からどんどんと体温が吸収されていく感覚は数年ぶりで
自分がアイスを食べなくなったことを思い出した
「…」
「いやーありがとね。これ以上持ってたら凍傷になる所だったよ」
「…なんでチューペット」
俺の独り言にキョトンとした表情を浮かべたその人は少し考え込むように地面を見つめる。しばらくすると納得したように頷き、手に持ったもう一本のチューペットを口に運びながら、再び俺の方へと視線を向ける
今思えば"チューペット"と"棒アイス"の言語の違いを理解して、脳内で咀嚼していたのかもしれない。確かこの前の休日にスーパーに行った時、チューペットを見て"棒アイス"だと言っていたから
「小学生」
「小学生？」
「さっき、サッカー少年たちがこの前を走って通り過ぎようとしてね。一番後列にいた子が転けたんだよ。ちょうど絆創膏持ってたからその子の手当てをしてあげたらさ。後から来たその子の母親にお礼として貰って」
「…」
「クーラーボックスに入ってたから冷えてるとは言ってたけど…まさかこんなにガチガチだとは」
だから指先が赤く染まっていたのか。チューペットを右、左、右と左右どちらともの手を使って持ち替えながらその人はしきりに、はぁと息を吹きかけている
…真夏、7月の最後辺り。こんな光景を見るとは思わなかった
「…」
「…」
会話はなかった。当たり前だ。お互いに初対面で名前も知らない。それにその人が来ていたのは俺の第一志望の高校の制服。年齢だって違うことも分かっていたから、何だか妙に気まずくなってその人の傍で棒立ちしていた
「あ、それ食べていいよ」
「え」
「というか食べて貰わないと困るかな。私、そんなにぼ…チューペット好きじゃなくて」
じゃあなんで貰ったんや
そう思ったが、流石に初対面の年上相手にそんなこと口に出すことも出来ず。それを口に運んだ
「…」
「…」
久しぶりに食べたチューペットの味。正味な話、あんまり美味しくはなかった。本物のぶどうの味はせず、人工的に作られた甘みが口の中に広がる
でも、その味は確かに幼い頃に慣れ親しんだ味で…思い出が味を変えたような気がした
「…やっぱ、ムースアイス食べたか」
「？」
その当時、その人が九州出身だなんて全く分からなかった
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みかん(プロフ) - タイトルのインパクトに惹かれて読んだのですがこの日常っぽい感じがいいですね…！好きです、私も関西圏に住んでいるのですがめばちこって聞いたことなかったです、九州弁の違いにも驚かされました。ショッピ君と夢主ちゃんの恋路が楽しみです、応援してます！ (2020年11月30日 0時) (
レス) id: e30e1010c9 (このIDを非表示/違反報告)
瑳花(プロフ) - かなさん» これからも全体的にほのぼのな話を更新出来たらいいなと思います！夢主ちゃんの話してる方言は博多弁と佐賀弁が混ざったものなんですが、可愛いですよね！九州弁！ (2020年11月29日 19時) (レス) id: bfa6318cb0 (このIDを非表示/違反報告)
瑳花(プロフ) - まおさん» 面白いと言って頂けるのが喜びです！私もﾂ-/ﾏﾝ/ｾﾙ好きなので、更新頑張りたいと思います！ (2020年11月29日 19時) (レス) id: bfa6318cb0 (このIDを非表示/違反報告)
瑳花(プロフ) - パソコンの精さん» "らしさ"が出てるなら非常に嬉しいです！色んな事情でどうしても更新は遅くなってしまうのですが、出来るだけ更新したいと思います！ (2020年11月29日 19時) (レス) id: bfa6318cb0 (このIDを非表示/違反報告)
瑳花(プロフ) - 粉みるく。さん» ありがとうございます！今後も力の抜けるような話を作っていきたいなと思いますね。 (2020年11月29日 19時) (レス) id: bfa6318cb0 (このIDを非表示/違反報告)
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