あの人たちの忘れ形見 (ページ10)

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遠い記憶。8 ページ10

姉さんたちが婚約した。

婚約してからは話がトントン拍子に進み、というか、私が進め、仲のいい妖怪達を招待して結婚式を挙げた。

夫婦になった2人の邪魔にならないように、私は家を出た。

別に気を使った訳では無い。姉さんには義兄さんがいるし、元々、自立するつもりだった。きっと姉さんは私がちゃんと独り立ちできるように女学校に通わせたのだ。

それをずっと前から知っていた。姉さんを理由に私が渋っていただけだ。義兄さんがいるからその理由も通らなくなったし、バイトして稼いだお金も、もう家にお金を入れなくても我が家は潤っている。

A「頃合かーー」

家を出て、人の中で目立たず生きていこう。

岩子「そう、貴方が決めたなら、私は止めないわ。ただ、辛くなったり、困ったことがあったら何時でも言ってちょうだい。私たちは家族なんだから。」

姉さんはいままで、1人で私を育ててきてくれた。1人で、頼れる人なんていなかったのに、

A「私には、そう言ってくれるんだ。」

岩子「え？何か言った？」

A「なんでもな〜い」

岩子「えぇ〜〜〜！」

もぉ〜！と言いながら笑っている姉さんは、相変わらず綺麗。

A「姉さん。ありがとう。」

義兄さんは少し残念そうな顔をしていたけど、就職先が決まったので1週間後家を出ていくことにした。

1週間後

岩子「いつでも帰ってきていいからね。気をつけて。」

義兄「達者でのぉ」

A「姉さんも義兄さんも、元気でね」

寂しいけど1人で頑張ろう。