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遠い記憶。4 ページ6

夏季休暇を終え、再び全寮制の学校へ。


次の長期休暇まできっと家には帰れないだろう。


実は、姉に隠れて私は学校の近くの喫茶店でアルバイトをしている。

私のアルバイト仲間達は様々な年代の人がいる。


特に私が仲良くなったのは、春子さんという20代後半位の人で、暇な時はよく二人で話している。




喫茶店はタバコ臭くて、普通の女性なら嫌がるような場所だが、そんなことは言っていられないと春子さんはキビキビ働く。




私たちが咳をしても、タバコの煙は四角い店という箱にむせ返っている。
所詮はアルバイトなのだ。







春子さんには物書きの夫があって、その夫は不倫をしていた。毎日朝帰りをすると、よく相談された。


春子「他に女がいたって私は構いやしないわ、ただ、そのかわり私にも優しくして欲しいの」


夫からは冷たい目線さえも向けられない、
まるで居ないかのような振舞いをされて精神的な暴力を振るわれているといっていた。


人間って白状で愚かだな。



そう思ったのが、9月の末のことだった。







その二ヶ月後、春子さんの訃報を聞かされた。






夫と最近上手くいっている。愛人の元へもあまり行かず、自分の元に戻ってきてくれたと話していた彼女は、

夫と共に行った旅行先の、赤城山の谷へ誤って転落してしまったという。




あんなに楽しそうにしていたのに、



その時私は私の中に何か、何か足りない空間が生まれたような、胸の上に何かが乗っているような、そん感覚に襲われていた。





人って簡単に死ぬんだな



初めて人間の儚さを知った。それと同時に姉がなぜ人を愛するのか、理解出来た。





いや、そんな気がしただけかもしれないが。



なんにせよ、春子さんはもうどこにも居ない。



人間の中で1番仲良かったのに。少し残念と考える頭と逆に痛む胸を、この時はまだそれが何故なのか理解出来ていなかった。

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さかな(プロフ) - 輪廻さん» ご報告ありがとうございます!修正しました! (12月24日 1時) (レス) id: fdbfb203cc (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 作者さーん!オリジナル作品タグついちゃってますよー! (12月23日 23時) (レス) id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:さかな | 作成日時:2023年12月20日 0時

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