あの人たちの忘れ形見 (ページ11)

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遠い記憶。9 ページ11

新しい生活が始まった。

職場は受付業務で、事務もこなす。

今の社会は男が働きに出て、女は家事が一般的な基準となっているが、全員が結婚している訳でもないし、お金に余裕がある訳では無い。

働きに出る女性は沢山いるのだ。

事務、受付などはいちばん無難で、稼ぎやすい職業だがその分倍率も高い。

受かる女性は、親のコネかハイスペックな女、顔がいい女、それがダメなら体で媚びを売る。そんなやつばかりだ。

私がこの職業に就けたのは、学生時代のアルバイトで培った作り笑い(あ、最近は営業スマイルというのか)と密かに学んだ簿記。私は顔がいいほうだったのでギリギリライン位で受かったのだろう。

男はだいたい、性的視線で女を見ている。そういう風潮なのだ。この時代は。国公式のそういう店があるくらいなのだから。
女は男に縋らなきゃ生きていけない。
家庭に入るのことが女の幸せ。
その代償として男性に身を捧げる。
そういう風潮。

こんな時代だからこそ1人で自立して、しかも1人の某白髪大男を養っている姉さんはより一層素敵に見える。

男女比率がほとんど男の職場で何とか日々をやりすごし、職にも慣れて生活にも余裕が出てきた。

戦争、スパイ騒動、と時代は変わっていく。

昭和25年。この年は、まぁ治安がいいとか平和とかまだ言えないそんな微妙な年で、朝鮮戦争やら金閣寺放火やら毛利東暗殺事件やら、物騒なことも度々起きていた。

長い年月を生きる幽霊族の私からしたら、そんなに気にする事はない。この時の私は、ただ時間が過ぎるのを待つような、そんな変わらない日々を送っていた。

そんな、微妙で変わらない、人間同士の戦いを呆れと少しの悲しみで終わらせるような年だったのだ。義兄が尋ねてくるまでは。

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新年明けましておめでとうございます。
本年は明けて早々、地震、羽田空港火災、沢山の方々が亡くなってしまいました。ご冥福をお祈りします。関東に住んでる身として、何も出来ないのがとても歯痒いです。皆様どうかご無事でありますように。

補足

主人公が人間同士の争いごとに、呆れと少しの悲しみを抱いていますが、主人公は岩子さん程人間を愛してはいないし、恨んでもいません。ただ、人間の友達はいるので徴兵や戦争で貧しい思いをしている友達に心を痛めています。