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「煙草、吸ってるん?」
コテン。肩を傾けて、煙草を渡そうとしたのは剛くんだった。いつの間にそこに居たのだろう。
「何で?」
「タバコの匂い、めっちゃする。」
「それは……私じゃない。」
首を振ると、彼はポケットから1箱、本来私たちが吸うことは許されていないタバコを取り出した。
「吸う?」
「やめとく。剛くんもやめた方がいいよ。」
「これ吸わんかったら、苦しくて叶わんのよ。
精神安定させるために吸ってんの。許して。」
そう言い、1本口に加えると、ライターで火をつけた。
もくもくと浮ぶ煙に、思わず顔をしかめる。
「剛くん……。」
「そんな顔せんでよ。俺のこと捨てたくせに。」
「違う、捨ててなんか。」
「捨てたやろ?」
じっと私の瞳を見つめる彼。
つぶらな瞳には悲しみが詰まっている気がして、
思わず彼を抱きしめた。
「しょうがなかったの。
私にはあれ以外答えが見つからなかった。
一緒に地獄に堕ちるより、別々の道を歩んだ方が良かった。」
仕方無かった。
そんな私の言葉に、彼は冷たい目を向けた。
「答えなんて見つけんで良かった。
俺はどこに行こうがお前と一緒に居たかった。」
「……。」
何も、何も言えなかった。
彼は私を見ると、不自然に口角を上げた。
「きっとお前は自分のやった事を後悔することになる。
後悔させて、泣かせて、縋りつかせてやる。
覚悟しとき。」
それだけ言うと、彼は掌にまだ火がついているタバコを擦り付けた。
皮膚が焼けていくのを、私は恐怖で凍りつきながら、見つめているのがやっとだった。
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チェリー - 凄く面白い話ですね!こういう話が一番大好きです!更新頑張ってくださいね!応援してます! (2019年6月8日 18時) (レス) id: 5dcb618811 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 続きが気になります!頑張ってください! (2019年5月22日 23時) (レス) id: 7f603c65a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:菜月 | 作成日時:2019年5月4日 9時