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少し間をあけて凛子さんが口を開いた。
凛子「お母さんは出ていったの、私たちを捨てて」
「えっ……へ、変なこと聞いちゃってごめんなさい」
凛子「別にいいの、智と仲良くしてくれてるみたいだしどうせバレることだもの…」
私と紗那は何も言えなくて。
大野先輩がそんな辛くて悲しい過去を抱えていたことを思うと
今までのことが走馬灯のように思い出される。
文化祭の合唱の本番前に向けられた、あの冷たくて寂しい目がふっと頭をよぎった。
凛子「Aちゃんはピアノやってるんだって？」
凛子さんが重い空気を払うように沈黙を破った。
凛子「智が言ってたの、Aって子がピアノやってるって」
「大野先輩が！？」
大野先輩が私の話をしてることに驚いた。
凛子「智が翔くん以外の学校の子の話をするなんて今まで無くてびっくりしたからちゃんと覚えてる」
「そうなんですか…。凛子さんもピアノやられていたんですよね？」
凛子「そう、だけど怪我で出来なくなったの」
「ええっ！ごめんなさい…」
凛子「あははっ、何で謝るの？(笑)ちょっとした事故に巻き込まれちゃって、弾けない訳では無いんだけど、飽き飽きしてたからやめたんだ〜」
凛子さんは笑顔で話したあと、一瞬体の力が抜けて肩を落として、ふぅっと息を吐いた。
そして、少し遠い目をした。
凛子「智もピアノの音が聴きたくなったのかな〜。あ、私ね、コンクールとかも出てたの！どっかに写真とかあると思うんだけど…」
そう言って服が入れてある引き出しとは違う引き出しをガサガサ漁って「あったあった」と言って見覚えのある小さい冊子を取り出した。
凛子「ほら見て、コンクールの時の写真。これが最後のコンクールだ」
私と紗那が覗き込む。
「このコンクール…」
私が毎年出てるコンクールと同じ会場。
そして、私ももらったことのある、終わったあとに上位者に渡される賞状入れだった。
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作者名：花 | 作成日時：2018年2月22日 18時
