血 (ページ11)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:15,232 hit

11 ページ11

.

『っあの、』
「ん？」

これ以上家族や友人の事、これからの事を考えたくなくて声を出すと直ぐに反応したのはテヒョン。
不思議そうな目線をこちらに向けたのはジミン。

肩を掴む手に力が入った理由は分からないけど。

『早くリビング、行きましょう…よ』

この空間で言葉を発するのに抵抗があったせいで最後らへんの声が小さくなっていってしまった。

完璧コミュ障拗らせてる…

数秒の沈黙にも耐えられなくて、ギュッと制服のスカートの裾を掴んだ。

「そうだね、うん、行こっか！」
「テヒョナ声でかい…ビックリしてるよこの子」
「この子じゃなくてAちゃん！」

いきなり大声を出すもんだから驚いて肩と心臓が飛び跳ねた。
真上からだから余計に煩い。

ごめんね？なんていいながらさり気なく手を繋いで来た。

きっと逃げられないようにする為だろう。

けど、こんな時に不謹慎だと思うけど、不覚にもドキッとした。

テヒョンって手大きいな、男の人って感じ。

ジミンと話しながら手前を歩くテヒョンの後ろ姿を見つめながら、そんな事を考えた。
だからか、もう頭にはさっきの虚しさや悲しさ、寂しさは綺麗さっぱりなくなっていた。

同時に今度はまた、これから彼らに洗脳されそうで怖くなった。

上げていた顔をまた下に戻した。

「ヒョンー連れて来ました！」

リビングに着くと、既に私達3人以外のメンバーは揃っていた。

テヒョンの声に皆顔をこちらに向けた。

若干俯き、テヒョンに誘導されるがまま止まったのはテーブルの横幅が狭い席、所謂誕生日席だ。

「はいA、自己紹介して！」

テヒョンがムカつく程素敵な笑顔を私に見せ言った。

皆も自席？に着いてじっと観察するように上から下まで見てくる。

な、なんか嫌だ…
そして緊張する…
仮にもファンだ。

ましてやあの高校に入った理由でもある人達の前で自己紹介だなんて、足も手も声もすごく震える。

ああでも待って、自己紹介って何言えばいいの？！

…もういいや、適当で。

『イA、です…18歳で…えっと、あ、アイスが好きです。よろしくお願いします…？』

考えてもどう言えばいいのか言葉が見つからず、結局発したのは可愛げのない無難な紹介文。

シーンとリビングが静寂に包まれる。

冷や汗が止まらない！
気まずい！！

そう思い目を瞑った瞬間、ふふ、と誰かが笑いを零した。

それを合図に7人は大声で、ではないけど笑い出した。

.