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「…俺のものになってくれ」
カラ松さんは床に私を押し倒し、馬乗りになる。
「どういうこと?」
「一つになるってことだ」
「よくわからないけど、カラ松さんはそれでいいの?」
「それでいいとは?怖いのか?」
「…別にいいよ。好きにして」
カラ松さんはぐいっと私に顔を近づける。
そのまま何もせず、じっとしていた。
「…どうすれば、れいは俺を愛してくれるんだ…」
そう言いながら私の上から退ける。
カラ松さんは片膝を立てて頭を抱える。
「愛するとかよくわからない。大切な人とかはわかるよ。それじゃダメなの?」
私は体を起こしながらカラ松さんに話す。
「それじゃあだめだ。俺だけじゃないと…」
「どうして」
「そんなの…俺には、何もかも足りないからだ…足りないんだ。俺はただそれを埋めたいんだ…」
「…私も」
私はカラ松の目を見る。
「私も、足りないの…わかる。何言われても、なんだかよくわからない…虚無感?空虚感…って言った方がいいかな。全く同じでは無いのかもしれないけど…カラ松さんと近いと思う。だから、大丈夫。一緒に埋めていこうよ」
カラ松さんは驚いた顔をする。
そして私の肩に顔を乗せた。
「れいは…違うんだな…」
そう言って、しばらくそのままだった。
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「れいちゃ…ええ!どうい」
「しー。お兄さん静かに」
扉を開けたのはお兄さんだった。
驚いた様子で大声を出そうとしたところを、私が止める。
驚くのは無理もないとは思う。
カラ松さんはあの後眠ってしまったのだ。
子供のようにすやすやと。
「えー…れいちゃん、起こさないの?」
お兄さんは小声では話す。
「起こしてもいいんだけど…起こす理由もないし」
「いやいや!理由はむっちゃある。とりあえずその体勢辛いでしょ?もう夕ご飯の時間だし、起こしちゃえば?」
「…でも…」
私はカラ松さんの頭にそっと触れる。
「なんか…かわいいし」
「ブグ」
「え?今のれいちゃんじゃないよね」
「私じゃないと思う」
私とお兄さんはカラ松さんの方を見る。
「カラ松兄さん、起きてるでしょ」
「…寝ている」
「答えている時点で起きてるじゃん!」
「し、仕方がないだろう!嬉しくて声が…」
「とりあえず退いてよ!」
お兄さんは起きていたカラ松さんを引っ張る。
「うわっ!なにこれなんで動かないの!」
「まだ離れる気分じゃない」
「いいから離れろっての!」
結局カラ松さんは渋々離れて、3人で1階に向かった。
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作者名:翡翠葛@優杏 | 作成日時:2020年4月27日 9時