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人は、知らなくて後悔することと知って後悔することがある。
前者は現実逃避に近く
後者は無謀に近い。
現実逃避は、その事実から逃れようとする行為。
知らなくて後悔するというのは、大抵が知ろうとしないのが原因だ。
逆に無謀は、それがどんな事実であれ、何がなんでも立ち向かう。
知って後悔するというのは、無謀に近く、また遠い。
なぜなら知ろうとする人は、知ることを恐れることがないから。
そのことから、知って後悔するのには2パターンある。
ひとつはただ耳に入ってきて、致し方がなく知ることになり、後悔する。
もうひとつは、知ることを恐れなかった故に、その事実に耐えられなかった後悔だ。
────
｢…ごめん、なさい…お兄さんが何を言ってるのかさっぱり…｣
きっと私は、恐れなかった故に後悔している。
｢お兄さん、私にはちゃんとお父さんとお母さんがいて、お兄ちゃんがいる。それは事実。じゃあ私はなんなのかと言う話で、私は…私は…｣
お兄さんにバレた？
けどなにか違和感がある。
話が合う様な合わないような…
とてつもない大きな違和感がまだそこにはあった。
知らなかったと言わんばかりの素振りを見せるが
混乱で頭の中はぐちゃぐちゃだった。
｢…安心して。僕も詳しいことは何もわからなかった｣
｢え？｣
｢今のはじょーだん…が半分。君は最初から戸籍が存在しなかった。雛田莉衣羽と僕がれいちゃんを間違えたおかしな現象にも説明がつかない。兄さんの資料では君が雛田莉衣羽なのにね｣
私を見るその顔は、微笑んでいた。
だけど、いつものお兄さんの顔じゃなくて
何か物悲しそうな、疑うような表情だった。
｢れいちゃんが本当に神様だったらいいのに。僕は、れいちゃんに一方的な愛情しかあげれないから…れいちゃんを信じることしかできないんだ｣
｢…何も言わなくてもいいですか｣
｢れいちゃんが嫌なことはしないよ｣
あぁ、だめだ。
自分に失望する。
お兄さんの言う言葉全てが痛いと感じる。
私には、勿体ない。
｢すみ、ません…準備があるからもう行くね｣
私が行こうと立ち上がると、お兄さんが私の手首を掴んだ。
｢そうやって逃げないでよ。僕のれいちゃんに対しての気持ちは、あしらって欲しくない｣
私には重すぎるその言葉は、負担と、不安の塊で。
｢あしらって…ない。どうすればいいの…愛してるとかそんなのわかんない、わかんないことに、私はどう向き合うのが正解なの｣
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作者名：翡翠葛@優杏 | 作成日時：2020年4月27日 9時
