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「おまたせしました」
声を発するの一歩手前で居間への戸を開ける。
「んー…ウエスト少し詰めないとダメね。スーツがメンズで作ってあるからそれに合わせて…全体のサイズ感は問題なさそうね、ウィッグは当日私がつけてあげるから今日のところはいいわ。あと歩き方が女っぽすぎるから、そこは…そうね、トド松くんとか居たら教えて貰えば大丈夫かしら」
トト子さんは次々と改善点をあげ、1枚のメモ用紙にそれを書いていた。
「…とまぁこれくらいかしら。おそ松くん、書いてあること明後日までに完璧にして。これ以下は許さないからね」
「ほーい。いやー俺らなんもわかんねぇからトト子ちゃん居てくれて助かるわぁ〜」
「そりゃあトト子がいるといないとじゃ、地球が存在するかしないかぐらいの差だもん。当然でしょ」
トト子さんは机に手を付いて席から立ち上がった。
「んじゃトト子そろそろ行くから〜。明後日…何時?」
「13時ぐらいには出発したいから、準備も考えて11時前後に来てくれたら大丈夫だよ」
トト子さんの質問にチョロ松さんが間髪入れずに答える。
トト子さんは少し悩む素振りを見せた。
「んー、その時間トト子お腹空くんだけど…まぁいいわ。適当に入れてくる」
「ありがと〜トト子ちゃん」
おそ松さんはニコニコとしながらトト子さんにお礼を言った。
その光景をみて、なんとも言えない感覚に襲われた。
あぁ、2人が一緒だと綺麗だな、と。
私の胸が痛み始める。
なんとも言えない不快感がしばらく続いた。
どうにもできない感覚がもどかしかった。
ーれいの部屋 6:50ー
いつも7時に起きていると、だんだんその時間より少し早めに起きるようになる。
目覚めて、明日のオークションについて考える。
何とも言えぬ感覚が、私の中であって
そのせいで連れて行って貰うことになって
罪悪感と同時に緊張が心を覆う。
楽しみで、申し訳なくて。
こんなにも朝が憂鬱だと、私は久々に実感した。
────
トントン、そう扉をノックする音が聞こえた。
ふとベッド横の置き時計を見ると8時前を指していた。
こんなに時間が経っていたのかと思うのと同時に、早く返事せねばとどうぞと言う。
扉が開いた先にはお兄さんが居た。
「お兄さん、おはよう。今日ってお仕事じゃなかったっけ」
お兄さんの様子がおかしかった。
いつもは私より先に声をかけるのに。
数秒間お兄さんは黙ったままだった。
「…大丈夫」
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作者名:翡翠葛@優杏 | 作成日時:2020年4月27日 9時