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「殺さねぇよ…話戻るけどさ、本当ならここでれいを殺さないといけない。仕事だからな」
おそ松さんは片方の手でそっと私を撫でる。
「でも…情報を消したし、USBも返したから依頼金も既に支払われ済みだしな。だから、れいは殺さない。殺す理由もない」
「私…足りないんです。いつも私は何かが足りません。ずっと…心臓がないみたいなんです…人間の失敗作…不良品なのは…確かなんです。おそ松さんに殺されるなら、もういいんです」
そう言うと、おそ松さんは抱きしめる力を強くした。
「れいはまだ生きろ。生きて俺らに恩返してよ。俺らのために、生きて」
「わからないです…おそ松さんは、どうして怒ったり優しくしたりするんですか」
「…最初は見極め。あいつらに迷惑になるようなら殺そうと思った。でもさ、俺自身もれいが欲しくなったわけ。わかる?出来損ないとか、自分はできないとか言うれいを、救ってあげたいわけ」
おそ松さんは私を離すと、私の前髪をあげて額に口付けた。
「優しいばっかじゃ、れいはだめになるだろ」
おそ松さんは優しく笑った。
「…おそ松さんは全然厳しくないです」
私はおそ松さんの服を掴む。
「優しいばっかですよ。他の皆さんも…優しくて…怖いです…また、なくしてしまいそうです」
「…大丈夫だって。裏切らない限り、死ぬまで一緒に居てやる」
おそ松さんはにこりと笑う。
「…はい」
どうしてだろう。
嬉しいはずなのに
足りなかった。
ー一松の部屋の前ー
トントンと扉をノックする。
すると中からどうぞと聞こえてくる。
扉を開けると、そこにはちゃんと一松さんがいた。
「一松さん」
「!れい!大丈夫だった?おそ松兄さんにきつく言われなかった?」
一松さんは私だとわかると、すぐに駆け寄ってきてくれた。
とても心配してくれている様子だ。
「大丈夫。ちょっと話しただけだよ」
「そっか…」
「あ、ぬいぐるみ取りに来たんだけど…」
「部屋に戻るの?」
「うん。今手伝ったら、一松さんの迷惑になっちゃいそう」
「ちょっと来て」
私は一松さんに言われて、後ろを着いてく。
一松さんは椅子に座ると、とんとんと自分の足を叩いた。
「来て」
「…座るってこと?」
「ん」
一松さんはコクリと頷く。
私は一松さんの膝の上にそっと座る。
「…これ作業やりにくくない?」
「やりにくい」
「退いた方がいい?」
「退くのはダメ」
一松さんは左手で私のことをがっしりと掴んだ。
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作者名:翡翠葛@優杏 | 作成日時:2020年4月27日 9時