Kissとhug 2

SEASONS ページ33

『ガーデン』藤井 風

そろそろ引越しのお話を、と
思っていたところにこの曲を聴いて
ふたりが窓際で風に吹かれてる
絵が頭に浮かびました。
涼太くんはあんなに愛されているのに
まだ少し自信がないのかもしれません
拗れすぎたのね、きっと笑

ちなみにマンションの上の階に住んでいるのは
あのお話の先輩方で
最上階には同じグループの
一蓮托生なカップルが住んでいるという裏設定もございます




*********






夏が終わってく





新しく借りることになった部屋は
まだ電気が通ってないくて薄暗い。
大きな窓を開けるとむわん、とした風が入ってきた。





ふたり揃って内見に来ることは出来なくて
翔太と一緒にここに入るのは今日が初めて。
俺と不動産屋の打ち合わせには何故か康二がついてきて
「しょったに見せるんや」と張り切って写真や動画を撮ってくれた。
翔太も見取り図とそれを見て「この部屋がいい」あっさりと言ったので
もっと難航するかと思っていた部屋選びは
思っていたよりもずっとスムーズに進んだ。


事務所が懇意にしている不動産屋だから
セキュリティや立地は問題ないし
マンションの住民にはこの業界の人が多いらしい。
俺たちみたいなカップルも何組か。
最上階とそのすぐ下には先輩カップルが長く住んでいるそうだ。
…お会いするの、あの時以来だな。
ちゃんと挨拶に伺わなくちゃ。




ふたり暮らしには、勿体ないくらいの広さ。
俺たちが出した条件はほぼほぼクリアしているし
確かに申し分ないのだけれど
翔太がやけにあっさりと納得したのが
後は引越しだけになった今も少しだけ引っかかっている。







もしかしたら翔太は後悔しているかもしれない







寂しがりのくせにひとりでいる時間が不可欠だから
俺が四六時中一緒にいるってことが
面倒くさくなったとか


ありえないことはない。






「…どした？日が暮れる前に測っちまわねぇと
暗くなったら目盛り、見えなくなるぞ」



ぼんやりしていた頭にカシャカシャと金属音が響く。
当の本人はメジャーと見取り図を手に持って
飄々とした顔してる。



「ごめん…ぼーっとしてた」

「明日はゆっくり店回るんだろ？
ついでに美容家電見たいしさ」

「うん…そうだね…」



上手く誤魔化せてないんだろう。
翔太はふう、と大きく息を吐いた。

パタパタとスリッパを鳴らして俺の隣に立つと
そっと手を繋いだ。

2→←甘い糧

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す