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「俺は涼太が可愛いんだ。
泣かしたらどうなるかわかってるんだろうなぁ」
ドスの効いた声が耳に響く。
「申し訳ありませんでした」
負けじと声を張る。
「次は、ねぇよ。涼太は俺のモンにする」
「先輩には渡しません」
「どうだかな」
ぐっ、と力が入ったあと、髪を掴んでいた手が離れた。
涼太のほうを向くと俯いたままの頭を撫でる。
チリっと胸の中が焦げた。
「今日は、一緒に帰れ」
「はい」
「俺は本気だからな」
「はい…」
俺には入って行けないふたりの世界を
見てしまった気がした。
「ちゃんと、言いたいこと言えよ」
「はい…ありがとうございました…」
涼太に向ける目は柔らかで
俺を射抜いていたのとは全く違う。
背中を押されて俺の前に来た涼太は
俯いたまま靴を履いて
こちらを見ようとはしない。
「じゃあな」
先輩はもう一度涼太の頭を撫でると
俺たちが出ていく前に背中を向けて
リビングへ入ってしまった。
「失礼します」
声をかけてドアを開ける。
涼太の手を握ると力なく握り返してはくれない。
そのまま玄関を出て静かにドアを閉じた。
暫く何も言えなかった。
涼太も俺に手を引かれて後をついてくるだけ。
エレベーターに乗って
ふたりだけの小箱になると、ようやく声が出た。
「涼太、ごめん」
抱き寄せても涼太の腕はだらんと降りたまま。
それでもぬくもりが嬉しい。
「一緒に帰ってくれる？」
涼太は俺の問いに小さく頷いて、
そっとＴシャツの裾を掴んだ。
「震えてる」
掠れた涼太の声。
「怖かった…」
「先輩が？」
「涼太が先輩のとこ戻っちゃうんじゃないかって」
えっ…と涼太が息を飲んだ。
「…知ってたの？」
「たぶん、そうじゃないかって思ってただけ」
「そっか」
エレベーターは下まで着いていて
今度は涼太が俺の手を引いて出た。
外へ出るとむわ、っとした夏の夜の暑さ。
大通りまで出てタクシーを捕まえようと思ったのに
涼太は手を繋いだまま反対へと歩き出す。
「どこ行くの」
「俺んち。歩こう、近いから」
気がついてなかったけど、
涼太のマンションからそんなに離れていない。
それがまたチリっと胸を焦がした。
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cayochi(プロフ) - ももさん、どちらともお読みいただき、ありがとうございます。私のお話はあちこち繋がっているので、そこも楽しんでをいただけたらと思います (2022年8月16日 21時) (
レス) id: ebdbe7a05a (このIDを非表示/違反報告)
もも - よく作者さんのお名前見ないで読んでいたんですがびっくりしました。かなり前読んでたお話とサムシングオールドが繋がっていたので。なんか勝手に不思議なご縁を感じてしまいました。 (2022年8月16日 21時) (レス) @page32 id: 0785fc92c5 (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - 密月のnbさんsideも読んでみたいです。なんか、色々知りたくなっちゃってすみません……･ﾟ･(●´Д｀●)･ﾟ･ (2022年7月27日 14時) (レス) id: b6d94fd4a6 (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - kmさんとnbさん、どっちも想いが重い。前髪掴んで睨み付けるけど目を逸らさなかったところ、めちゃめちゃ好きで。ほんとにドラマを見てるようなそんな感覚に陥りました。nbさんとdtさんは付き合うまでどんな状態、様子だったんでしょう。どんな二人か気になります (2022年7月27日 14時) (レス) id: b6d94fd4a6 (このIDを非表示/違反報告)
まな(プロフ) - こんにちは、まなです。読ませて頂きました。そっか、そっかぁ。私の解釈が違っていたらごめんなさい。【密】がキーワードだったんですね。【とろとろの密】【言えない密】【知られてはいけない密】。色模様、関係、想い。結局、好きと言ってしまったけど…うん切ない。 (2022年7月27日 14時) (レス) id: b6d94fd4a6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：cayochi
| 作者ホームページ：
作成日時：2022年6月11日 23時
