ニコイチ

彼の流儀　たつ2 ページ21

｢悪いけど、今日はふたりで飲みたいねん｣
さっきからキッパリ断っとるのに

｢えー。いいじゃないですかぁ｣
｢飲みにいきましょぉ｣

食い下がってくる。

｢ね、丸山さぁん｣

グイっと腕掴まれたところで
隆平の眉間にシワが寄る。

あ。アカン。

｢行きましょうよぉ｣
気づいてないのか。
しなだれかかるアホ女。

｢行くわけないやろ｣
低い声。
｢離せや｣

あぁぁ。出た。出てきちゃったよ。
黒マルちゃん、登場。

｢えっ｣

驚いてぱっと手離す。
多分見たことないもんなぁ。
温厚な隆平が怒ったとこなんて。

グッと睨み付けたけど
一瞬でいつもの優しいマルちゃんの顔。

｢寿司屋に香水付けてくるような子は
俺もたつも好かんねん。
俺の好きな子はよく食べてよく笑うけど
綺麗にご飯食べて、場の空気も読む子なん。
可愛い顔してメイクも上手やけど
お勉強が足りひんわ。
はよ帰って勉強し？
谷間だけじゃ、お仕事もらえんよ？｣

まだ驚いてるおねぇちゃんらの頭ポンポンってして
にっこり微笑む。

キッつ！
優しい顔で優しい声でキツイわぁ。
おねぇちゃんら、ポカンとしてるけど。

｢たつ、行こ。
大将、すんません。お騒がせして
この子たちのぶんも一緒におあいそお願いします｣

スッと立ち上がって会計すませる隆平は
貫禄あって格好よかった。
ちょとポリネシアンなとこも隆平らしいわ。
いつもは可愛い子猫ちゃんなんになぁ。

お店出て並んで歩く。

｢りゅう、男前やったなぁ｣
｢もう！からかわんといて｣
｢格好良かったで？｣
｢あの子らも、誰かがちゃんと教えてやらな。
俺らは先輩に教えてもらえたけど
知らんまんまやったら、かわいそうやん｣

確かに俺らは先輩にお店での立ち居振舞いも
厳しく教えてもらったもんなぁ。

｢それにたつの足、ずっと撫でてたし｣

え？そこ？見えてたん？

もぉ、かわいらしいわぁ。
この後、もっと濃いぃぃぃボディタッチさせてな。

｢たつぅ。はよ、お部屋行こ｣

よく食べてよく笑う。
綺麗にご飯食べて、場の空気読みすぎるほど
きぃ使う俺の可愛い子。
香水なんてつけなくっても甘くて美味しそうな
匂いがしてきた。

はよ、行こ。
甘いもん食べたくて、忠義くんの忠義くんが
お腹ぺこぺこになっとるで。

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