彼の匂い りゅう3 ページ12
ある日。
あの人が眠りにつく前。
｢俺な、ちゃんと音楽勉強したい。
海外行きたいん。
何年かかるか、わからんけど｣
そうポツリと呟いた。
｢夢、なんやね｣
そう答えるのが精一杯やった。
いつかどこかへ羽ばたいていってしまうんやな。
俺らの元を離れて。
｢おん。そんときは、お前も・・・
まぁええわ。おやすみ｣
それっきり何も言わなくなって
しばらくしたら寝息たててた。
｢お前も｣
そのあとは何言うつもりやったんやろ。
一緒にいくか、とでも言うてくれるつもりやったんやろか。
自分の音楽を極めること。
それがあの人の夢やってこと。
その夢のはしっこに俺を置いてくれたらと
思いはしていたけれど。
起こさないようにそっと腕を離して
ベランダに出て月を見上げた。
アカンよな。
俺はあの人の翼を折ることなんてできない。
況してや一緒になんて・・・
足枷になんのも嫌や。
それに俺には俺の大切なもんがある。
それは揺るぎないもんや。
でもこのままやと、そのときがきたら
すがりついてしまうかもしれん。
やったら、今。
俺にできること。
あの人が飛び立つ時に笑って送り出せすために。
脱ぎ散らかした服。
かき集めて着替えた。
微かに香る俺のじゃない匂い。
そのまま起こしもせんで
部屋を出た。
家へ向かうタクシーのなかで
ひとことだけメッセージ送った。
真っ暗で静かに冷えた俺の部屋。
靴脱いでそのまま脱衣場へ向かった。
服脱いだときに、また香ったあの人の匂い。
全部洗濯機に放り込んで
熱いシャワー浴びた。
愛しい人の匂いがシャンプーの香りに消されてく。
服についた匂いは洗濯機の渦に飲み込まれてく。
なんもかも消してしまえればいい。
ただあの人が付けた赤黒いシルシは
いくら擦っても消えなくて
鏡の中の俺は酷く哀れに涙を流していた。
次の日、メッセージがひとつ。
あの人からのたったひとこと。
短いメッセージ。
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cayochi(プロフ) - salmonさん» お話の続きを読むのは、その方の自由です。きっと他の方でも私のお話が嫌で読むのを止めた方は沢山いらっしゃると思います。ご意見ありがとうございました。私もいろいろ考えることができました。 (2019年5月19日 21時) (
レス) id: e43f968c2a (このIDを非表示/違反報告)
salmon(プロフ) - ｺﾒﾝﾄへの返信ありがとうございます。このｼﾘｰｽﾞの最新作でのｺﾒﾝﾄで嫌なら戻ればいいというのがありました。なのでｽﾄｰｶｰの話が出るとわかってからは読んでいません。ｺﾒﾝﾄを読んでいると自由だからなのか私のような人は少数派なんだなと思いました。 (2019年5月19日 20時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - salmonさん» ご意見ありがとうございます。自分がストーカーについて軽い思いでいるつもりではありませんし、それこそ意見の違い、表現の違いだと思います。文章で書くか物語で書くか。私は物語を表現方法として選んだだけです。 (2019年5月18日 15時) (レス) id: 42bd12e124 (このIDを非表示/違反報告)
salmon(プロフ) - ｢ﾊﾞｶｯﾌﾟﾙもﾊﾞｶばかりでは本当のひとつになれない｣であるにしてもｽﾄｰｶｰを物語に入れる必要ありますか？別の方で｢ｽﾄｰｶｰ騒動について｣と題して自分の考えを書いた文章を読みました。ﾌｧﾝでも違いがあるのだなと感じています。 (2019年5月18日 11時) (携帯から) (レス) id: 998ae028aa (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - botanicalさん» ご意見ありがとうございます。私は私の思いとしてお話を書いています。一緒に困難に立ち向かって欲しいという願いも込めたつもりです。不快な思いをされたになら申し訳ありません。バカップルもバカばかりでは本当のひとつにはなれないと私は思っています。 (2019年4月23日 19時) (レス) id: e43f968c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：cayochi
| 作成日時：2018年12月5日 2時
