恋 彼らのお話

今さら　しんご3 ページ41

｢でも、このままでおるのは嫌や｣

まっすぐ目見られるなんて滅多にないからどきっとしてしまう。

｢俺は雛とちゃんとしたい｣
｢ちゃんと、ってなんや｣
｢ちゃんと付きおうて添い遂げたい｣
｢だから、どういうことよ｣

｢この先、ずっと俺の嫁としてそばにおってくれ｣

｢嫁？｣
｢おん。嫁。アカン？あ、逆の方がええ？｣
｢そこちゃうわ。ヨコは俺でええの？｣
｢雛がええ｣
｢俺、可愛いないで？｣
｢雛は可愛いで？｣
｢マルみたいにええ嫁になれへん｣
｢マルはこの際どーでもええ。
信五。俺は今のまんまのお前がええんや。
返事は？｣

｢はい。よろしゅうおねがいします｣

ヤバ。泣きそう。
いや、泣くとか恥ずかしいことできひん。
下向いて誤魔化そうとしたら
ヨコがシュルッと俺のとなりに滑り込んだ。

｢アホか。なんで俺の前で我慢するん｣

頭をぽんぽんとされたら素直になるしかないやん。
ポロポロとこぼれた涙。
自分のことで泣くなんてどれくらいぶりやろう。
じっと肩を抱いてくれてるヨコが
あったかくて余計に泣けてくる。
幸せやんなぁ、俺。

｢個室で良かった｣

ぽつり、ヨコの声。

｢おーくらの気持ちがよくわかった。
こんな可愛い信五、誰にも見せたない｣

ちゅって頬っぺたにキスされて
もうどうしようもないくらい恥ずかしい。
ヨコってこんなに甘いんや。
知らなかった顔、まだまだあったんやな。
もっと見てみたい。
俺の知らん顔。
初めて見るヨコ。

｢ウチ、いこ｣

真っ赤になったヨコが俺の手をひく。
こないだとは全く逆。

がーっと会計してばーっとタクシー停めて・・・と思ったら
意外と混んでる道路。
焦れたヨコがちょっと渋い顔しとる。
ぎゅっと手繋いだまんま、何も話さんで外見てる。
ちょっとづつ冷静に・・・はならんのが不思議や。
俺の手をなぞるヨコの長い指。
くすぐったくてドキドキする。
窓に写る顔が綺麗で何度も盗み見た。

なぁ、ヨコ。
俺、今お前しか見えへん。

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