My Funny Valentine 2

愛を伝えたいだとか　す ばる ページ3

「すば、俺のこと避けてるでしょ」

久しぶりにきた電話。
ライブ終わりの昂ってる脳ミソに
まとわりついてくる。

「忙しいだけや」
「でも・・・」
「悪い、今ライブ終わったとこやねん」

じゃな。
答えも聞かずに電話を切った。
親友やし、可愛い後輩。
だけど空気読まんとこがある。

派手に遊んどるのスッパ抜かれたんと
俺がアイツとまた関係持つようになったのと
タイミングがうまく重なって
密にしてた連絡が途絶えただけ。

それだけのこっちゃ。
付き合うてるわけやない。
そのつもりになってはいたけど・・・。

正直、今はめんどくさい。

帰り支度始めたところでさっきとは違う着信音。
他のヤツとは違うメロディ。

慌てて出ると
耳馴染みのええ高い声。

「もしもし、しぶやん？」
「おぅ。どした？」

「ライブどうやったかなと思って」
「サイコーやった。そっちは？」
「こっちもサイコーやったで」

弾んだ声。
満面の笑顔思い出したら
さっきのイライラが全部溶けて消えた。

「今日どこやったっけ？」
「香川と徳島」
「遠いな」
「おん、遠い」

あんさ、しぶやん。
甘ったるい声。

「今日何の日か知っとる？」
「バレンタインやろ？」

「せやねぇ」ふふふ、って小さく笑ったから
「なんや？」って聞いたら
「なんでもないよぉ」ってはぐらかされた。

『やすださーん』
電話の向こう、スタッフに呼ばれる声がする。

「呼ばれてんで」
「んー。ごめん。行くわ」
「声聞けて良かったわ」

「あは、くすぐった」

「明日帰るわ」
「ん。俺も」

「ほな」

アカンわ、俺。
電話切って画面見つめてニヤけてる。

ぽや、っとしてたら、またスマホが震えた。
相手はアイツ。

「どした？」
「バイバイって言ってない」
「お前、変わらんな」
「へへ。変わらんよ」

見た目はずいぶん変わったけどな。

「じゃ、な」
「おん」
「ばいばい」
「ばいばい」

心のなかがホコホコしてる。

「渋谷さん、差し入れ届いてます」

へらへらしてる俺に訝しげな顔したスタッフから
小さな桐の箱ひとつ渡された。

ええ匂い。

蓋開けたら苺がひとつぶ。
たぶんこれは高いやつ。
メッセージカードにはひとこと

『渋やんのぶん』

アイツの文字。

「さいっこーやな」

真っ赤な熟れた苺。
ひとくちで頬張る。

「あまっ」

糖度の高いヤツ。
甘くて酸っぱくて上等。
しょーたみたいな味。

帰ったらまるごと食いついたろ。
可愛いケツ思い出してひとりでまたニヤけた。

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