恋彼らの片思い2 (ページ9)

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ライバル　ハヤト1 ページ9

はぁ。
どうしようかな。
誰にも相談できない。
できない、って言うかしたくない。
『事務所辞めようかな』
なんて考え始めてること。

キラキラしてる同期たち。
デビュー決まったりグループ名がついたり。
なのに俺は・・・

歌うのが好きでこの事務所のオーディションをうけた。
スタッフさんに
演技の勉強もしてみないかって言われたけど
歌じゃダメだって言われてるみたいな気持ちになって
うまく受け入れられない。

大先輩に恋して、パートナーのこれまた大先輩に
『負けません！』
って大見得切ったくせに、
くよくよ悩んでる自分が情けない。

それでもレッスンサボる勇気もなくて
事務所に通う。
あーあ。
カッコ悪いな、自分。

「あ。ヤバ」

そんな時にバッタリ会っちゃうもんだ。
今１番会いたくない人。
丸山くん。

俺の好きな人、のパートナー。

いつでも楽しげで人に囲まれてて。
ふわふわと笑顔を絶やさない。
『愛されるべき人』
その象徴みたいな人。
今日もスタッフさんと笑いながら歩いてる。

おはようございます、って口を開きかけた時

「あ！おはよう！久しぶりやね。元気やった？」

丸山くんのほうから声をかけてくれた。

「おはようございます。ぼちぼちやってます」

なんとか笑顔見せようと必死になってるのは
まだ俺にもプライドが残ってるからかも。

「今日は？レッスン？」
「はい。今終わったところです」
「そっか。頑張りや」
「ありがとうございます」

当たり障りのない会話。
だけど俺の目を優しくまっすぐ見てくれた。

「ほな、またね」
「はい。失礼します」

ペコっとお辞儀しようと頭下げたら
なぜか涙が目にたまってきた。
ヤバイ。ヤバイ。ヤバイ。
顔、上げられない。

ポタリ、涙が床に落ちた。

「あ。この後時間ある？」

もうこの場を離れたかと思ったのに。

「ご飯食べに行こ。あったかいもの食べよ」

俺の頭ぽん、と撫でて
優しい声で丸山くんが言った。