恋彼らの片思い2 (ページ7)

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扉あけて　おーちゃん2 ページ7

結局。

その日も後輩くんとは飯食って飲んで健全に帰った。
帰り際の淋しげな顔に胸が痛んだけど
なし崩しで始めるのは失礼ってもんだろ？
曖昧な関係にできるような子じゃないから
ちゃんとしたいんだ。

それで今。
ご機嫌に酔っ払ったマルと向かい合ってる。

「今日は忠どうしたんだよ」
「ええの！オトモダチと飲み行かはったから」
「誰だよ、オトモダチって」
「キタヤマくん」

あぁ。それで。
ミツも忠、大好きだもんなぁ。
距離感バカだし。

「俺を当て馬に使うなよ」
「そんな失礼なことせぇへんよ。
純粋におーちゃんとお誕生日会したかったの」

拗ねた赤い顔。
くちびる尖らせて。

「まぁ、いいけどよ」
「んふ。だからおーちゃん大好き」

大好き、か。
loveじゃなくlike。
俺に向かってスルリと「大好き」と言えるのは
『友達』の証みたいなもんだよな。

「最近さ、後輩くんと仲良くしてて」
軽いジャブ打ってみた。

「へぇ。ええやん！誰ぇ？」
モグモグと唐揚げ頬張ってる。

「小瀧」

ほぇ。
名前出したら目見開いた。

「のんちゃん？仲良しやったの」
「うん。だいぶ前から」
「なんや知らんかった」

ごくん、と飲み込んで微笑む。

「お付き合いしてはるの？」
「まだそこまでじゃねぇけど」
「迷ってはる？」

俺の目を覗き込んだ。
思いの外、真剣な眼差し。

「うん」
「ええ子やん」

マルには直属の後輩だもんな。
可愛がってる連中のひとり。
時々話にも上がる。

「俺、おーちゃんには幸せになってほしい」

はっきり、きっぱり。
迷いのない言葉。

「俺、今幸せだから」

まっすぐ俺を見た。

そっか。

今、オマエは俺の思い、断ってくれたんだよな。

「俺、マルが好きだった」
「おん」
「新しい扉開いてもいいか？」
「おん。いってらっしゃい」

ふんわり笑った後、
いってらっしゃい、って変か？って首捻った。

あぁ。可愛いな。
俺の好きなマルだ。

「乾杯すっか」
「せやね」

カチン、とグラス合わせて
残ったレモンサワー、一気に飲み干した。

炭酸のシュワシュワが喉を通って
俺の心のつかえが一緒に流れた。

「ええお顔してはる」

ほわほわとまた頬を赤くして
微笑むマルはやっぱり可愛い。

不意にテーブルの上のスマホが揺れた。
マルがディスプレイをちら見する。

「たつがお迎え来るって」

今度はとびきりの笑顔。
くっそ。今日イチでいい顔しやがって。

俺も行ってくるかな。
アイツに会いに。

一歩踏み出して扉開けに。