恋彼らの片思い2 (ページ6)

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扉あけて　おーちゃん1 ページ6

「おぉぉぉぉぉぉちゃぁぁぁぁん」

きた。
来るよな、そりゃ。

「最近つれないんやから。やっと会えたわ」

特番の終わり。
楽屋を出て、出口へ向かう廊下。

番犬連れてニッコニコして
俺のところに走り寄ってきたマルは
少し痩せて美人になってた。

「忙しいんだよ」

素っ気なく言ったけどホントは違う。
避けてた。
自分の気持ちにちゃんとケリつけられるまで
会いたくなかった。

それにしても。
今日はやけにベタ甘だな。
番犬が睨んでるのも全く気に止めてない風で
俺の腕に絡んできた。

「おーちゃん、ご飯食べ行きましょ」
「あ、俺今日予定ある」
「なんや、つれないわぁ。じゃあ、この日は？」

マルが差し出したスマホのカレンダー。
ちょうど都合が良さそう。

「いいけど、忠は？」
「ええの！たつもご飯行くんやて」

忠はちょっと苦笑い。
あ。なんとなく察し。
ちらっと目が合って片目つぶった忠に
ニヤリと笑って返した。

マルは気づかないふりして
はしゃいでるけど・・・。
怖いわぁ。
　
ほな、また！連絡するぅ。
手を振るマルと追いかける忠を見送った。
　
双子みたいな後ろ姿。
ご機嫌とるみたいに頭を撫でる熊と
ちょっとスンとしたタヌキ。
くっついてジャレあって。
可愛いな。やっぱり。

俺とマルじゃ、あの空気感にはならない。

完敗なんだよな。
今さらだけど思い知らされる。

拗れた片思い。
終わらせようとするたび現れるから
なかなか踏ん切りがつかない。

だって今も心臓の奥の方が焦げて痛んでる。

あぁ。もう。

不意にポケットのなかでスマホが揺れた。
ディスプレイには後輩くんからのメッセージ。

『何時くらいに終わりそうですか？』

今日のご飯の相手。
距離は少しずつ近づいてきてる。
たぶん、俺が思い切れれば・・・。

『もう出るところ。いつもの店で』

それだけ返信入れて、出口へ急いだ。