恋彼らの片思い2 (ページ11)

今日:11 hit、昨日:3 hit、合計:37,228 hit

ライバル　ハヤト3 ページ11

丸山くんは次から次へと
俺に料理を勧めてくれる。

「人がご飯食べてるとこ見るの好きやねん」
「丸山くんの食べ方はキレイで美味しそうに見えます」
「そう？ありがとう」

にっこり笑って
ある人に言われたって言葉を教えてくれた。

「そうやっていろんな人に教えていただきながらきたんよ」

ぽん、とまた俺の頭を優しく撫でる大きな手。
安心したのか、酔いのせいなのか
ぼろぼろと涙がこぼれた。

「なんか、あったん？」
「俺、事務所辞めようかと思ってて・・・」

そこから一気に自分の気持ちを話した。
丸山くんは、時々相槌を打ちながら
静かに俺の話を聞いていてくれてる。

「丸山くんにあんな大見得切ったくせに、情けないですよね」

はぁ。
大きく息を吐き出すと、また涙が出てきた。

「情けなくなんかないよ」

柔らかな表情のまま丸山くんが言った。

「自分の生き方に迷いがない人なんておらん」
「丸山くんも迷ったこと、あるんですか？」
「そりゃあるよ。ついこの前までいろいろあったし」
　
あ・・・そっか。そうだよな。

「それに道はね、ひとつじゃないから。
意にそぐわないことも、やってるうちに身になることもあるし」

ほら、ね。
って見せてくれた指先には固そうなタコ。

「ベース、嫌だったんですか？」
「おん。ギターやってたからね、弦太いし痛いし」
「丸山くんのベース、好きです！弾いてるとこ、カッコいい」
「そぉ？ありがとう。今じゃすっかりはまって家、ベースだらけ」

もう買ってくるなってたつに言われてるん、
って酔った赤い顔、さらに赤くするから
可愛いな、なんて思ってしまった。

俺もスタッフさんに
演技の勉強を勧められたばかりだった。
それを伝えると

「ええやん！やってみ！」

嬉しそうにまた頭を撫でてくれた。

「それにキミに辞められたら俺が困る」
「え？」
「キミに負けへんようにっていつも思ってるもん」
「俺に？」
「そう！キミが俺に宣言したんやで」

あははって楽しそうに笑って
ビールをグビッと飲んだ。

こんな人になりたい。

素直にそう思えた。

「はい！やっぱり目標は丸山くんです」
「そんなん嬉しいわぁ、お互い頑張ろな」
「はい。ありがとうございます」

乾杯！またグラス合わせた時、
丸山くんのスマホが揺れた。

「あ、たつ来るって。ご馳走してもらお！」

ディスプレイ見て微笑む横顔が
これまた美人。

「負けません」
「俺も」

俺のライバルは大きくて強くて可愛い人。
おでんのタコ頬張ってる。