まつにぃの場合 17 ページ32
俺が気持ちを伝えてマルが頷いた。
それだけ。
作りかけの食事をふたりで仕上げて
テーブル挟んで向かい合って食べた。
交代で風呂に入って
いつもみたいにマルの少し癖のある髪を
ドライヤーで乾かしてやる。
心地よさそうに細める目。
俺はコイツの目が心底好きだった。
どちらともなく寝室に向かって
昨日の夜と変わらず
俺の腕の中で枕に埋もれてマルは眠った。
明日から暫く東京を離れる。
いつもだったら会えない時間を惜しむように
抱き合ってから眠るのに
今日はトントンと背中を叩いているうちに
寝息が聞こえてきた。
コイツは嘘が上手になった。
本当に辛いときには逆に無邪気に振る舞う。
俺はそれをわかっていながら気づかないフリしてた。
マルは最後の最後まで嘘をつくつもりだ。
そっと腕枕外してベッドを出た。
オデコにひとつキスをして。
ドアを開けたままキッチンへ水を取りに行く。
ソファに腰をおろして、しばらくぼんやりしてた。
俺は動けなかった。
ベッドから鼻水啜る音がする。
だから動いちゃいけなかった。
マルは今、本当の自分で涙を流しているから。
手を離した俺にはそんな姿見る資格はないから。
鼻水を啜る音が止んでベッドに戻ると
疲れ果てて眠る子供みたいなマルがいた。
俺は泣きはらした顔中にキスして
寝息聞きながら一夜を過ごした。
朝、ウチを出るとき
昨日の朝と同じようにマルは玄関まで見送りにきた。
｢行ってくるな｣
｢はい。いってらっしゃい。俺もすぐ出ます｣
｢おぅ。じゃぁ、な。頑張ってこいよ｣
｢まつにぃもおきばりやす｣
昨日と同じように抱き合ってキスをした。
いつもより、ほんの少し長く。
パタン、と玄関のドアが閉まった。
あぁ。寒くなったなぁ。
俺とマルの恋は、呆気なく終わった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 147人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cayochi(プロフ) - さとぴさん、こちらにもありがとうございます。この後少しだけ続きますのでそちらもお読みいただけると幸いです(*^^*) (10月8日 19時) (
レス) @page14 id: 89ed3d2d70 (このIDを非表示/違反報告)
さとぴ(プロフ) - こんにちはm(_ _)m いつも素敵な お話ありがとうございます(^-^) おぉちゃーーん( ；∀；)切ない！切なすぎる！おばちゃん、また泣いてまいましたm(_ _)mアチラのグループさんでは智潤推しのオババですが、基本 雑食！笑 こちらの本編カプさんのほっこり大好きです！ (10月8日 15時) (レス) @page9 id: 961310e404 (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - (名前)ゆーきゃんさん» イケナイコトカイは関係が始まってすばるくんを思う隆平さんかなぁ、と私も思っておりました！今日は靖幸ちゃん１日聴いてました(笑)忠義さんバージョン、頑張ります！待ってでくださいね〜 (2019年6月28日 20時) (レス) id: c55178e693 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)ゆーきゃん(プロフ) - cayochiさん» 二人のハジメテが、まつにぃを引きずるマルちゃんを、すばるくんが半ば...いや、ほぼ無理矢理に...だったとは...意外！関係が始まってからは...イケナイコトカイのがピッタリかな？笑 私も、kkoyanagiさんに同意！忠義さんの片思い...待ってまーす(^^)/ (2019年6月28日 19時) (レス) id: 9b0edcc515 (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - (名前)vividさん» すばるくん、the男ですねぇ。映像化！恐れ多いわぁ。でも嬉しいです(´- `*)私も見てみたい！ (2019年6月28日 10時) (レス) id: a293f198c5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：cayochi
| 作成日時：2019年5月22日 3時
