恋 彼らの片思い

まつにぃの場合　12 ページ27

アイツの目が俺を射抜いてる。
局の廊下。
バタバタと遠くでスタッフが走り回ってる。

ここだけ温度が下がっているみてぇだな。
体が冷えちまう。


デカイ歌番組。
おたがいのグループが一緒に出る。
誰にもまだ俺らのことは話していないから
わちゃわちゃ大勢で話してても
素知らぬフリしてた。

時々目があって視線だけで会話する。
秘密めいたやりとりも楽しいもんだな。

今日はうちの事務所から沢山出させてもらうから
楽屋は騒がしくって仕方ねぇ。
笑い声が上がるところの真ん中にマルがいる。
仲間に囲まれて無邪気に騒ぐを見てるのも悪くない。

飲みもんでも買ってくるか。
こっそりなんか買ってきて渡してやるかな。
フワフワとした思いを巡らしていると
廊下に出たとこでアイツに捕まった。

｢まつにぃ、マルをどうするつもりですか｣
アイツは前置きなしに俺に言った。
誰にも知られていないはずなのに。

｢何のことだよ｣
俺は一瞬、目を反らした。

｢本気ですか｣
真っ直ぐで強い目。
こんな目には真っ直ぐ答えなきゃいけねぇよな。

｢あぁ。本気だ｣
俺も思いを込めて見返した。

｢なら、手、離したってください｣
バッと頭を下げた。

｢マル、不器用やから。
このままやと、夢じゃなくまつにぃを選ぶ。
それはマルが求める幸せじゃないはずや｣

｢んなことオマエに言われる筋合いはねぇよ｣

｢わかってます。でも。お願いします｣

頭下げたままのアイツに背を向けた。
言葉が出てこなかった。

マルの幸せ？
そんなもん、マルにしかわかんねぇだろ。

どんな道選んだとしても俺がマルの全部を引き受けてやる。

上等じゃねぇか。
俺の覚悟、見せてやる。

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