シャツのかおり たつ1 ページ32
仕事終わり。
『嫁、持って帰ってくれ』
スマホにあん人からメッセージが入ってた。
『今から向かいます』
慌てて返事して大急ぎで着替えた。
隆平を迎えにちょっと背伸びせないかんBARに向かう。
その店はあん人の行きつけの店。
何度か連れていってもらったけど
大人っぽすぎて、馴染めんかった。
ふたりでランチするって言うたから
いっといでって送り出した。
ちょっと拗ねた顔になってたはずやわ。
隆平の元カレって前に偉大なる先輩。
とてもじゃないけど敵う訳がない、俺も憧れてる人。
信頼しとる。
やから、送り出せる。
たぶん、こういうとき、気を付けなアカンのは隆平のほう。
なんかのきっかけで、ぽろっと箍が外れてしまいそう。
単に俺が不安なだけなんやけど。
約束はせんかったけど、こうなると思ってたから
ちょっとええカッコしてきた。
無駄だとわかってても俺かて背伸びくらいはする。
重い入り口のドア開けると
カウンターに並ぶふたりの背中が見えた。
静かな店やから、声を落として話しているのか
肩が触れるか触れないかの距離。
全く気づいてくれんから、
わざとそっと近づいて隆平を後ろから抱きしめる。
｢お待たせしました｣
驚いた顔のふたり。
ふふふ。って俺の腕にぴとっと顔寄せる隆平。
そこそこ酔ってるな、これ。
｢おぉ、まぁ、座れよ。何飲む？｣
スツールひとつズレて
俺を真ん中に入れてくれる、涼しい顔したまつにぃ。
ビール頼んでふたりの間に腰かける。
｢りゅう、ワガママ言いませんでした？｣
｢ずっとオマエの話ばっか。俺ノロケ聞かれっぱなし｣
｢そんなことないやぁん。真面目な話もしたでしょ｣
敬語もなくて碎けた話し方。
ジリッと胸が焦げる。
だけど顔には絶対に出さん。
ちっちゃな俺のダンナとしての意地。
仕事の話やら後輩君たちの話やら。
もうすぐになったツアーの話も。
ドラム叩きてぇなぁってボソッと呟いた顔が切なく見えた。
トイレ行くって隆平が席を立った。
｢オマエら、うまくいってんのか？｣
こそっと聞かれた。
｢大丈夫ですよ、案外うまくいってます｣
｢そうだろーな｣
ニッカリ笑って耳の後ろを指でトントンと叩く。
昨日寝てる隆平に俺のってシルシ付けたとこ。
俺の頭のグシャグシャに撫でて
｢アイツはオマエのもんだよ｣
そう言ってまた笑う。
こん人もこんな淋しそうな笑い顔すんねや。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 389人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cayochi(プロフ) - kkoyanagiさん» うわぁ！おめでとうございます！楽しんで来てくださいませね。でも無理は禁物！まだ時間ありますから体力蓄えて！今、喉やられてる方多いみたいですね。エイトのパワーもらったら回復早くなるかな？ (2019年7月26日 18時) (
レス) id: c55178e693 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - 何とか解放席が当たりました。日曜行ってきます。先週から気管支炎寝込んでいてやっとこ一昨日床上げで体力持つかなぁ心配 (2019年7月26日 18時) (レス) id: 9936377b81 (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - みんな大好きオス田(笑)ネコキドとどっちがいいかなぁ、なんて考えてるだけで楽しいですよ〜。ちょっとお待ちくださいね！ (2019年7月25日 21時) (レス) id: c55178e693 (このIDを非表示/違反報告)
kkoyanagi(プロフ) - ふふふっ、オス田。好物です。 (2019年7月25日 17時) (レス) id: 9936377b81 (このIDを非表示/違反報告)
cayochi(プロフ) - (名前)ゆーきゃんさん» 実は忠義さんの方がポリネシアン度深そうな気がしてるんですよねぇ。ヤキモチ妬いたらいろいろと大変そう(笑)ヤンマーちゃんでこんな感じ・・・ふふふ。できそう(笑)お楽しみにっ (2019年7月25日 10時) (レス) id: a293f198c5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：cayochi
| 作成日時：2019年3月31日 15時
