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「で、今日は何の用?」
「ヌナ、今日ハロウィンだよ」
「そうだね」
「トリック!オアトリート!」
「あー、私そういうイベント嫌いだから」
「えー!」
やけに良い発音で例の呪文を唱えたと思えば、ドンヘはおもむろにポケットから何かを取り出し始めた。…ていうかあんた、今包み紙開いてるけどそれ棒キャンディだよね?なんで食べるの?普通逆じゃない?
「なんでお前が食うんだよ」
「え?さっきもらったから」
「そういう問題じゃねーよ」
膨らんだ頬っぺは小動物みたいで可愛いけど。ドンヘが何を考えているのかは数ヶ月程度じゃ全く分からない。突然突拍子も無い事をしては楽しそうに笑うコイツはいつも本能の赴くままに生きているから、たぶんヒョクよりも子どもに近いのかもしれない。
ヒョクは顔が良いから契約が取れるって言ってたけど、本当に顔が良くなかったらサイコパスと紙一重なんじゃないかと思う。可愛さと狂気は紙一重なのだ。
「ヌナ、トリックオアトリート」
「だから、私そういうの嫌いだからお菓子とか持たないようにしてんの」
「ぶー。ヌナのケチ」
「ケチって何よ!ほら、そろそろ始業だからさっさとホームしなさい!」
「そーだそーだ、俺がハウスまで連れてってやるから早く帰れ。な?」
「えー!」
ご飯を片付け終えて帰ってきたヒョクがそのままドンヘの肩に手を回した瞬間、明らかに周りがざわざやと賑やかになった。
辺りを小さく見回すと、休憩もそろそろ終わりだと言うのにこの二人を見る為なのか、女子社員達が近くのテーブルを陣取ってこちらをちらちらと見ている。
そういえばあまり近すぎて忘れていたけど、ヒョクもドンヘも社内では一位二位を争う程に女性人気が高いらしい。ドンヘはその甘い顔立ちと子どもみたいな無邪気さ、ヒョクは持ち前の明るさと他人を気遣う優しさが各々人気なのだと他の女子社員に聞いた(盗み聞きだけど)ばかりだから、あまり面倒にならないように注意しようと思っていたのに。
まずい、そろそろこの二人と距離を置かないと。ただでさえ仕事でブーイングされてるのに、また陰で何か言われちゃたまったもんじゃない。
「…私、仕事あるから。後はヒョクに頼むわ」
「おー、任せとけ!」
「あ、待ってヌナ!」
「ん?」
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作者名:みょうじなまえ | 作成日時:2020年11月3日 22時