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「あー…もう、めんどくさい」
本来私は、パソコンが苦手なのだ。特にエクセル。消したい文字がほんの少しズレただけでよく分からない文字列が現れて、表自体がぐちゃぐちゃになってしまう。計算式を入力し直さなきゃいけない手間も、後でそれを見直さなきゃいけない手間も、そりゃあもちろん必要な作業だけど、こうしてみると本当に面倒だと思う。ダイレクトに届くブルーライトも細かな計算式も、見ていると頭が痛くなりそう。
…はぁ、最悪な金曜日だ。
「よう」
「うわっ!?…て、ヒョク!!」
「お疲れ〜。まだやってたんだな」
まさか誰かが来るとも思わない私は完全に油断していて。何よりも後ろから聞こえた声よりも驚いた自分の声量に、今までの集中力はもうどこかへと散ってしまった。
「何しに来たの?もう…もう九時!?」
「時間経つのも気づかないくらい仕事してたの?」
「全然気にしてなかった、まだ七時くらいだと…」
「相変わらず真面目じゃん」
「うっさいなぁ…」
この男――ヒョク、イ・ヒョクチェは。ずっと私と同じ部署で働く唯一の同期であり、私が親ライオンという名の先輩から崖の下に突き落とされた憐れな子ライオンだった時代から、ずっと傍で私を見守ってくれている友人である。
「まだ終わらない感じ?」
「んー…計算式が全部ズレてて。予算の桁がおかしいって思わなかったかなぁ…」
「ははっ、あの子は無理でしょ」
「だよねー…」
私の隣のデスクに腰を落ち着かせたヒョクは、いつも通り目尻にくしゃりと皺を寄せて楽しそうに笑っていて。いつもなら愛嬌があって見ていて癒されると思うけれど、今日は生憎そんな余裕は無い。こちとら今日中に全て訂正し直さなければ提出期限に間に合わないのだ。ぽへぽへと笑ってる男なんぞに構っている暇は…
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作者名:みょうじなまえ | 作成日時:2020年11月3日 22時