2-13 ページ13
「Aこそ。…………なにやってんの？」
雨音に混じった、ちょっと余裕のないジヨン先輩の声
あっ、だめだ……と思った時にはもう手遅れで
薄茶色の瞳に捉えられたら動けなくなってしまう
「………別に」
「なんもないのに黙って突っ立ってんの？」
「あのっ」
「なに？俺に見惚れてたわけ？」
「違います！」
くくっと喉を鳴らして笑うジヨン先輩
こんな些細なやり取りもこんなふうに先輩と話すことはもうないと思ってたから
心臓が揺れる
その理由をあたしは知ってしまったから
やめてって自分自身に一生懸命訴えかけるけど、やっぱりどきどきと鳴り止まない鼓動
「まぁ、なんでもいいや。傘ねぇしコンビニまで入れてってよ。」
ジヨン先輩が身を屈めて傘に入ってくると
ジヨン先輩のいつもの香水と混じった別の甘い香りがふわっと漂って
胸の奥が一気に痛くなると、瞼の裏側を熱いものが込み上げる
あたしには
悲しむことも嫉妬する権利もないくせに………
全部、自分が決めたことじゃない
忘れる、って決めたじゃない
「…………なんもよくねぇわ。」
冷めたジヨン先輩の声と、がしっと掴まれた手首
突然のことでびくっと身体が反応したら
掴んだ右手を軽く揺らして、先輩があたしの顔を覗き込んでくる
「……A。今日……お前誰といた？」
「え？」
「言わなくてもわかっけど。」
ぼんやりした頭が、ジヨン先輩に握られたままの手を思い出して振り払おうとすれば
「むかつくんだよ…………」
「…先輩？」
ジヨン先輩の視線があたしを見つめてから
ふっと離れたその時
力任せに後頭部に回された手のひら
ざーーーっと容赦なく降りつける雨
通り過ぎる車のヘッドライトに照らされる真っ赤な傘
近づきすぎたあたし達を異質な世界に連れ込んだみたいで
「…………なんなんだよ。マジで、」
“むかつく”
そう耳元で先輩の声聞こえたら
あたしの視界は、目を閉じたジヨン先輩のまつ毛でいっぱいになって
後頭部に添えられていない方の手は
しっかりとのあたしの背中に回っていて
どくん、どくん
この心臓の音はどっちのものなのか
そんなの、知らない
ただ
柔らかいジヨン先輩の唇が、強引に重ねられていたってことだけ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1120人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「K-POP」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
merry(プロフ) - なつこさん» なつこさん！お返事遅くなりました(>_<)未だに不安定な状態で心配事もたくさんありますがわたしもなつこさんとまたお会い出来るように準備しております！体調をくずされませんようお元気でお過ごしください！ (2020年6月3日 23時) (
レス) id: 04887bd533 (このIDを非表示/違反報告)
なつこ - お元気ですか？見えない敵と闘いつつ、もはや共存していかなければならない今になって、自由やありのままの生活のありがたさに気づきました。merryさんと再会できることを願っています。ご自愛ください。 (2020年5月9日 22時) (レス) id: c319d287df (このIDを非表示/違反報告)
merry(プロフ) - たかさん» たかさん！いつもありがとうございます。たくさん更新出来いことや、色々思い悩んでましたがこんな素敵な言葉を頂けて嬉しくて幸せです。テテちゃんのお話とジヨン先輩のお話楽しみにお待ち頂けるとありがたいです(*^^*) (2020年2月26日 0時) (レス) id: 04887bd533 (このIDを非表示/違反報告)
たか(プロフ) - merryさん！とりあえずお疲れ様でした。そして新しいお話ありがとうございます！テテにも素敵な幸せが来ること楽しみにしています。 (2020年2月22日 0時) (レス) id: b941ac7055 (このIDを非表示/違反報告)
merry(プロフ) - ともこさん» ともこさん！わーん(><)ひとつひとつ言葉を大切に読んでいただけて本当に嬉しくて泣きそうです。これから甘々なジヨン先輩を想像していまからにやけてます。本領発揮したジヨン先輩のターンをもう少しだけお待ちくださいね！いつもありがとうございます！ (2020年2月7日 1時) (レス) id: 04887bd533 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：merry
| 作成日時：2019年9月19日 20時
