HONEY HOLiC

Darling 22 ページ22

｢ホールケーキ残ってて良かったですね。｣

｢あってもなくてもいいけど。｣

｢スンリさん喜ぶかな。｣



スタッフの誕生日を祝うってのは、たっぴょんが決めたルールで



今回はスンリの番


恒例行事でサプライズでもなんでもねーけど、毎年スンリは大袈裟に喜ぶ



その買い出し役にクジで選ばれたのは、俺とジニで




｢ジヨンさん見てください！｣



ジニの嬉しそうな声に目線を上げると




色とりどりのスポットライトを浴びたクリスマスツリー



それを眺め、手を繋ぐカップル




最近構ってやれなかったから、次の休みはAの行きたいとこへ連れてってやるか



寒いって言いながらも、はしゃぐAを思い浮かべたら



胸ん中は擽ったくて、無意識に上がった口角




｢ジヨンさん…あたしの話を聞いてましたか？｣

｢悪い、なに？｣

｢コンタクトずれたみたいで……｣




立ち止まって俯いたジニに視線を合わせたら




｢なんでそんなに無防備なんですか？｣

｢え？｣

｢あたしのこと意識してないからですか？｣



意を決したように俺を見上げたジニは



｢あたし、ジヨンさんが好きだった……もう何年もずっと好きなんです。｣



真っ赤な顔で、今にも泣き出しそうで



｢あたしじゃダメですか？Aさんよりあたしの方がずっとジヨンさんのこと大好きです。｣


｢………俺が、Aをすげー好きだから。ジニの気持ちには答えられない。｣




もしも、Aが俺を好きじゃなくなったら



なりふり構わず、繋ぎ止める



自分じゃどうにもならないほど



Aのいない毎日になんか生きてる意味はない





ジニの頬を涙が濡らすけど、俺は見て見ぬ振りをした




優しさってのは、時々残酷で


変に誤解を招くなら、罵られても冷たい方がいい





俺が泣いて欲しくないのも


俺のそばで笑ってて欲しいのも



Aだけだから




ハンカチを取り出して、涙を拭ったジニを確認してから1歩踏み出した瞬間







反対側から聞こえた“危ない”って叫び声と



ギギッーっとタイヤが地面を擦る嫌な音





俺に向かって突っ込んでくる、ヘッドライトがやけに眩しくて






｢…………｣




ゆっくりと視界が真っ白になって



身体が引きずり込まれる感覚




一瞬でまわりの音がぜんぶ消えて




誰かの悲鳴の隙間に






“ジヨン”



Aが俺を呼ぶ声がして





俺はまた



あいつのこと泣かしてしまうんだな………って




ぼんやりと思った

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