HONEY HOLiC

Darling 3 ページ3

｢ジヨン。｣

｢……。｣

｢ねぇ。ジヨンってば！｣




露骨にヤキモチ妬きすぎたかな？


ちょっとわがまま言い過ぎたかな？




びゅーびゅーと木枯らしが吹く中


ずっとだんまり決め込んだジヨンの背中にこれでもかってくらいの熱視線を注ぐけど



こっちを見てくれる素振りがない




街灯に照らされて、落ちた影は並んでるのに


出来てしまった隙間が寂しいって言ってるみたい



もうそろそろ、ご機嫌直してくれたっていいじゃんか




｢ジヨンのばか。｣




ぼそっと呟いて、ぴたり脚を止めると


はぁって大袈裟なため息を吐き出したジヨンが振り返った



あたしってずる賢いな



ジヨンの指が、むにっとあたしのほっぺたを摘まんで




｢……誰が誰を嫌いだって？｣

｢知らない。｣

｢ったく。お前は｣




呆れたようなジヨンがあたしの頭をわしゃわしゃ撫でる




相変わらずジヨンは、あたしのことをばかばか言うけど




ほんとはジヨンが優しいのも、あたしに甘いことも


触れる手のひらがあったかいことも


好きでいてくれてることも




あたしはちゃんと知ってるの




言いすぎてしまったことは、心の中で深く反省している



でも……ごめんねって言えない代わりに



ジヨンの腕にぎゅっとしがみついた






もうすぐアパートに着いちゃう


こんな日はジヨンにずっとくっ付いていたい、けど




明日はお互い仕事だし


次の日がお休みの時しかお泊まりしないって、いつの間にか暗黙のルールみたいになっていて




いつもあたしを送り届けてくれる門の前



だけど、ジヨンは脚を止めない




あたしを見下ろすジヨンが、ちょっとだけ笑った



それだけで、嬉しくって跳ね上がる心臓





｢来たいなら素直に言えばいいのに。｣


｢お前の方こそ来て欲しいくせに。｣




ヤキモチ妬きだし、わがままで


ダメなとこしかない、あたしだけど





｢ジヨン。｣

｢ん？｣



まだ残ってるアルコールのせいで


頭がクラクラして


単純な事しか思い付かないけど





｢ずっと好きでいてね？｣




お願いごとをするように、繋いだ手にぎゅっと力を込めた




同じタイミングでジヨンも



ぎゅっと、あたしの手を握り返してくれる



それはまるで“わかってるよ”って合図のよう




｢好き。｣

｢ん。｣


｢もう好きすぎてあたしの心臓大変なんだけど。｣





ジヨンがあたしに笑ってくれるだけで





胸の中が甘くてとろけそうで……心底満たされる瞬間

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