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vol. precious one ページ46

長かった夢から呼び覚ます小さな温もりのある風が頬を撫でた

手から読みかけの本がするりと落ちて目を開くと

膝にはブランケットが掛けられていて


「起きた?」


窓が閉まった音と共に風は止み、声の方へと目だけを動かした


「…甘ったるい、においがする。」

「外に杏の木があるの。それかな。」


柔らかい声に耳を傾けて

ぼやける視界には、ぱたぱたと横切る後ろ姿



「ちょっと、たぷ!」

今度は怒った声が聞こえる


「またあたしのプリン食べたでしょ?!」

「食った。」


ぶすっと膨れっ面で俺を睨んで


「明日にでも買ってきてやるよ。」

「今食べたかったのに!」


拗ねて膨らました頬にキスしたくなる



「ちょっと。聞いてる?」

「聞いてるよ。」


髪を撫でてやると、途端に目を細めて

俺の手のひらに擦り寄る姿は戯れる猫




「ね。やっぱり夢だったのかな。」

「ん?」

「たぷと遊園地行ったって誰も信じないの。」

「だろうな。」

「もう1回やってよ。幽体離脱ってやつ。」

「無理だよ。」

「また階段から落ちたら出来るかも。」

「出来ねぇし。」



ぎゅっと俺の頬を両手に掴んで、首を横に傾けた



「2人してわかんねぇ事を考えても仕方ないだろ。」



冷たくしたつもりはない

散々俺はお化けだなんだと言ってるけど

説明出来ないもんは、この世の中腐る程あるって事



「たぷ。あたしに会いたかったの?」




俺を見つめる瞳に

俺はただ笑い返しただけなのに


Aは何もかもわかり切ったように満面の笑みを浮かべた




止まらない時間はあまりにも孤独で


カレンダーに残されたあの赤い丸印


守れなかった約束が


ずっと気になって



それを確かめるのが怖くて、そのまま放置して


気の遠くなる時間が経てば後悔という名に変わり


深い所まで沈んでしまっていた



「もう…どこにも行かないよね?」



甘い記憶は

俺が取り戻したかった、時間



「なぁ。A。」




お前よりも大切な人なんか

この世に存在するわけがない




「……愛してる。」



好きだと言うのにもあれほど躊躇したのに


自然に口に出した言葉に自分も驚いた



「うん。あたしもだよ。」



死ぬほど恥ずかしい思いをしてまでも伝えたかったのは


これからも、ずっと側に居たかったから




見上げるAに落としたキスは


今さら眠れない夜を埋めつくす




俺の隣でAが幸せになることを


俺は毎日祈ってる



24/7 vol. once more END

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作者名:merry | 作成日時:2016年12月22日 22時

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